筋書きからはもう少しファンタジーっぽいものを想像していたけど、その想像とは全然違った。これは架空の町の物語に託されためちゃくちゃ現実の世界の話だった。
〈はじまりの町〉の人間は、「羽虫」と呼ばれる余所者の尊厳を踏みつけることで自らの自由と誇りを保持している。その「羽虫」に属する4人の登場人物の視点から、町の人間の本質があぶり出されていく。
全体主義や戦争に向かう道すじは、本当に些細なことから始まるのだろう。思考の放棄、貧富による差別や権力への盲従が、やがて自らの身も滅ぼすことを克明に描いている作品だ。
著者はきっとこの物語を遠い何処かの国の話ではなく、読む者すべての人の自分ごとなのだと、警鐘を鳴らしている。
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- 感想投稿日 : 2023年11月13日
- 読了日 : 2023年11月11日
- 本棚登録日 : 2023年11月7日
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