前作「昔話の深層」はスイスで受けたフォン・フランツ女史の講義での河合ノートの書籍化だった。前作でも予告されていたが、日本人が日本の昔話をフォン・フランツ女史風に分類し解釈するとどうなるか、をやってみたのがこの本である。
最後の章に「1章から9章までの記述を、一楽章より九楽章へと続く楽譜としてではなく、オーケストラの総譜の一段目より九段目に書かれた楽譜として読みとって頂きたいのである」とある。
結論は9章の最後のところにまとめてあるのだが、1章から丁寧に咀嚼して読んでいかないと、9章の深みが味わえない。再読だが1度目は飛ばして読んだと思う、学術論文のようで、自分で調べて理解する単語が多く、ページが進まないのだ。
河合さんは、たぶん難しく書きたかったのではないだろうか。その目的は、専門家を唸らせたい、という商売っ気だったとおもう。当時の専門家の(民俗学の?)評価は高かったと思うが、一般の人には知らない文献の引用が多すぎて、わかりずらい。ほとんどの人は「昔話の体系」を知らないので、最初からいろんな昔話が花火のようにバーンと頭の中に散らばってしまい、訳がわからなくなる。
私の無知を披露することになりますが、グリム童話は昔話を収集したもので、イソップやアンデルセンは創作童話であることでさえ、私は知りませんでした。
アンデルセン:「人魚姫」「マッチ売りの少女」
イソップ:「ありとキリギリス」「ウサギとカメ」
グリム:「赤ずきん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」
グリムさんは、日本でいうと柳田國男ですね。
WIKIPEDIAで「物語の類型」や「昔話」「説話」「伝説」をちょっと調べてから、この本を読みはじめると良いかもしれません。
偶然見た「昔話から見た日本的自我のとらえ方 日本昔話が持つ教育的効果に関する一考察」安藤則夫 植草学園大学是速教育学部 も参考になりました。(「昔話と日本人の心」への批判もあります)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/1/0/1_KJ00008210899/_pdf/-char/ja
- 感想投稿日 : 2022年12月31日
- 読了日 : 2000年11月11日
- 本棚登録日 : 2020年11月11日
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