本書では資本主義の本質を探るだけではなく、ポスト資本主義の社会についても考察していく。著者はこれまで「貨幣」とは何か、を再三追求しており、その命題に対して著者は「貨幣は貨幣だから貨幣である」という結論を出す。これはマルクスの「価値形態論」を批判し追求した結果、貨幣の本質が自己循環論法であることを証明した。また貨幣のみならず、「言語」と「法」の実態についても本書で繰り返し考察される。著者によると、これら三つは、それ自体には物理的な力を持たないが、社会的実在、すなわち社会的動物としての人間が、これらを媒介することで、人間が人間として存在するのだという。言語は意味を、法は権利と義務を、そして貨幣は価値という、目では見えないが一定の力が働く。
後半では、資本主義を超えた先にある市民社会のあり方についても考えていく。市民社会とは、国家(法の力)の側面と資本主義(貨幣の力)の側面の二つを持っていると著者は考える。そして、最終的には法が支配する国家か、貨幣が支配する資本主義を補完するようなシステムになるだろうと著者は考える。そこで鍵となるのが人間の倫理性であり、倫理性が現状の資本主義に対抗する力を有しているという。
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- 感想投稿日 : 2024年3月4日
- 読了日 : 2024年2月14日
- 本棚登録日 : 2024年2月14日
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