うつくしい子ども (文春文庫 い 47-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2001年12月7日発売)
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本棚登録 : 6162
感想 : 744
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★3か4か悩む。前半部分はすごく好き。
弟が人を殺してしまったと知っても、「和枝」という自分の弟を真っ直ぐ見つめようとした主人公。そして、主人公を「殺人犯の家族」として悪意をもってみたりせず、同情するわけでもなく、友達でいた(友達になった、の方がしっくりくるかもしれない)2人。弟が人を殺したきっかけになった相手を、自分の友達を傷つけた相手を、恨むのではなく救おうとした主人公。それはタイトルの通り「うつくしい子ども」であり、とくに主人公の心の内を描く描写には好きなところがたくさんあった。でも、物語としてはちょっと詰め込みすぎてるというか、回収しきれていないというか、やや消化不良(学校や保護者の問題だったり、女装のことだったり、女であることへの違和感だったり)。夜の王子の事実は隠されたまま、本人と父親が死んで終わりってところも、何となく腑に落ちない感じが残る。この物語に出てくる、うつくしい子ども。そして、それが正しいかどうかは別にして、うつくしさを持ち続けたまま大人になった(と私は感じた)記者や警察署長。それに対して、歪んでしまった夜の王子や和枝。どこに違いがあるのだろう。でもきっと、うつくしい子どもの誰もが夜の王子になる可能性があるし、この事件で3人が負った傷は、描かれている以上に深くて見過ごせないものであると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月28日
読了日 : 2021年3月28日
本棚登録日 : 2021年3月27日

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