([お]4-3)ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)

著者 :
  • ポプラ社 (2014年2月5日発売)
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感想 : 146
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文字で綴られた音楽

多くの小説の魅力は「構造的な美しさ」に依存している。

ナボコフやツヴァイクの作品はまさにその好例だと思う。

読者はその精緻に組み立てられた構造と仕掛けに酔い、読後感を味わう。

この作品の魅力はそれらとはまた異なる。

構造がまったく気にならず、まるで美しい旋律の鼻歌のように会話や情景がハーモニーを描く。

作品中、会話と情景描写、心理描写に切れ目がなく、流れる淸水を眺めているような気持ちになる

考えて見たらそうだろう。心の中では会話と思いと感情と風景がシンフォニーのように淡々と流れるのが人間だ。

時代の流れから取り残され、かといって弾かれるわけでもなく、徐々に下り坂を下っていくひとたちが主人公。

彼女達を動かしているのは、ノスタルジアのように見える。

でも、なんと美しいエンディングだろう。

幸せとは、毎日眺めている石垣の中、たったひとつの石つぶの中に、幼い自分が付けた傷を発見する事なのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月17日
読了日 : 2023年7月17日
本棚登録日 : 2023年7月17日

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