『日常』は さりげなく過ぎ忘れていく
『あのこと』は 忘れることができない
柔らかい手ざわりですが、読んだあと 忘れられない作品です。『神様』収録中の『神様』はデビュー作。『神様2011』は東日本大震災直後に書かれた作品です。名久井直子さんの装丁もすてき。
作者の あとがき より~
2011年の3月末に、わたしはあらためて、「神様 2011」を書きました。原子力利用にともなう危険を警告する、という大上段にかまえた姿勢で書いたのでは、まったくありません。それよりもむしろ、日常は続いてゆく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性をもつものだ、という大きな驚きの気持ちをこめて書きました。静かな怒りが、あの原発事故以来、去りません。むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。今の日本をつくってきたのは、ほかならぬ自分でもあるのですから。この怒りをいだいたまま、それでもわたしたちはそれぞれの日常を、たんたんと行きてゆくし、意地でも、「もうやになった」と、この生を放りだすことをしたくないのです。だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年3月17日
- 読了日 : 2023年3月5日
- 本棚登録日 : 2022年3月12日
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