義務教育や大学受験のための勉強を通じで教え込まれてきた歴史認識が、誤解を孕んだものである(可能性がある)、ということを著者の研究成果から導き出される推測をもとに解説されています。
全体的に、へぇそうだったのか、と思わされる内容で、これが真実か否かについては、賛否両論ありうると思いますが、一つの仮説として、歴史観に関する知識の引き出しを増やせたような読後感があります。
全体的に、「言葉」の成り立ちを軸に歴史の解読が進行していきます。
<目次>
Ⅰ 「日本」という国名
歴史と言葉/国名が決まった時
倭人と日本人/日出づるところ
Ⅱ 列島の多様な地域
日本国の範囲/すべての帝国は道を作る
日本は孤立した島国ではない/平将門の新国家
Ⅲ 地域名の誕生
「関東」と「関西」/自立していく九州
広域的地名と神仏/気づかれていない地域意識
Ⅳ 「普通の人々」の呼称
「人民」と「国民」/手垢にまみれない言葉
柳田学と渋沢学/納税の義務を負う「平民」
「土」が意味するもの
Ⅴ 誤解された「百姓」
「ひゃくしょう」と「ひゃくせい」
さまざまな生業の「百姓」
多様な人々を指す言葉/一変した江戸時代像
誤解は江戸時代から/「農」の陰に隠れたもの
農本主義と重商主義/貧困な歴史学の用語
Ⅵ 不自由民と職能民
古代・中世の不自由民/「奉公人」の出現
博奕の道、好色の道/聖なるものの直属民
Ⅶ 被差別民の呼称
差別意識の東と西/ケガレにどう対処するか
伝染するケガレ/ケガレのキヨメ
非人・放免という職能民/死とのかかわり方
ケガレから汚穢へ/差別される人々/今後の課題
Ⅷ 商業用語について
商業取引の高度な伝統/市はどこに立てられたか
「手形」と「切符」の誕生/「手」は何を意味するか
聖なる金融から、俗なる金融へ/「接待」と「談合」の歴史
Ⅸ 日常用語の中から
誰のものでもない「落とし物」/神の意思を集約した「落書」
土の中は異界だった/「募る」の三つの意味
「がいな」と「あたん」/中世における「自由」とは
失われた日本語の豊かさ
Ⅹ あとがき
- 感想投稿日 : 2014年8月16日
- 読了日 : 2014年8月14日
- 本棚登録日 : 2014年8月16日
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