ファッションデザイナーだった74歳のイコさん。人生の「ラストラン」と銘打って、赤いバイクを買い、ライダーススーツに身を包み、幼い頃亡くなった母の故郷・岡山を目指す。母の生家である古い家屋で会ったのは、12歳の少女のゆうれい…。
角野栄子さんの自伝的小説「トンネルの森1945」を読み終えた後で本書の存在を知った。「トンネル…」では幼い少女だったイコ。またイコが登場する作品を読みたいと思ったのがきっかけである。
思いがけず、幽霊の少女ふーちゃんと旅することになるイコさん。屈託ない、実にマイペースなふーちゃん。道中、他のゆうれいと会い、思い残していることを探っては心置きなく旅立つための手伝いをする。ファンタジーではあるが、あちらとこちらの壁は存外薄いものかもと思い知らされる。
何より、バイクを颯爽と乗りこなすイコさんのカッコよいこと!すごくいい意味でエイジレス。歳を重ねることで自ら限界を決めちゃうのはナンセンスだなと思わされる。
ちょっと風変わりなロードノベル、読者もイコさんのバイクの後ろに乗せられた気分で、物語がどこにいくのか想像が付きそうで付かない。その振り回され感もまた楽しいというか。ある「ねじれ」現象により、振り回されるイコさんが年相応に見えない、むしろ失われた「娘」ポジションを旅の過程で取り戻していくように見える。
角野さんの分身「イコ」登場作品、シリーズというわけではないから設定に若干の違いはあるものの、自伝的作品ということで共通する部分はある。角野さんの歩みの点と点を結んでいくようなつもりで、またイコ登場を楽しみに待ちたい。
- 感想投稿日 : 2022年10月17日
- 読了日 : 2022年10月17日
- 本棚登録日 : 2022年9月1日
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