愛してよろしいですか? (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2010年6月25日発売)
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本棚登録 : 328
感想 : 31
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三十代のOL・すみれと、一回り下の大学生・ワタルとの恋物語。しょっぱなに出てくるハイ・ミスという言葉を久々に聞いて、却って新鮮に感じる。本書の初刊が昭和54年ということで、所々昭和っぽい描写はあるが、そこがネックになるどころか、そんな前に描かれたの!?と驚くほど瑞々しい。
すみれとワタルとの出会いはローマ旅行。まず、そのエピソードの一つ一つが胸キュンの連続。何よりワタルの人たらしっぷりよ!掴みどころのなさが実に心憎いのだが、固定観念に縛られない柔らかな考えを持った男性像は、一歩も二歩も時代を先取りしていたのでは。それでいておばあちゃんを大事にするとか、しっかり就活してるとか、真面目できちんとしたところもまたギャップがあってよい。
どこか少女マンガっぽいようで、地に足ついてるなと思えるのが、三十代の女性キャラが描かれているところ。自立してきっちり仕事してるすみれ、彼女の友人で主婦のふく子、どちらもそれぞれに三十代女あるあるエピソード(職場の苛々や夫婦間のいざこざ)がリアルである。
歳の差を気にしながらも、見事に恋に七転八倒なすみれ。理性が吹っ飛んだり、はたまた姉さん風吹かして上から物申したり。そしてワタルもなかなかのプレイボーイで、ハラハラなシーソーゲームだ。恋模様を追うだけで十分ドキドキだが、冒頭のローマ旅など国内外のデートシーンもまたワクワクで、ファッション描写やフード描写も田辺作品のお楽しみの一つだ。ピンクのジーンズに、リンゴに矢が刺さったプリントのTシャツってすごくかわいいな。
余談だが、大好きな漫画家の大好きな作品の大好きな登場人物が、本作のワタルをモデルにしていたと最近知った。思いがけず推し作家と推し漫画家が繋がり、身悶えである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2024年1月3日
読了日 : 2024年1月2日
本棚登録日 : 2023年10月8日

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