「昭和」の夫婦、恋愛、家族が描かれた五つの短編。独特の湿り気を感じるんだけど、じっとりしすぎず、怖いもの読みたさでページを繰る手が止められなかった。何だか、哀しさと可笑しさが混ざり合って、泣きながら笑うような…一筋縄では行かない感情が捻れて捩れて、思いがけないところに着地する。皆、それぞれに器がちっちゃいんだけど、その小ささ加減が絶妙なんだよなぁ。どこか欠けているからこそ、そういう完璧じゃないところに共感する。
実はいまだに向田邦子ドラマをちゃんと観たことがないのだが、本作を読んで、さすが脚本を書く人の言葉のチョイスだなとつくづく思った。こんな場面でこんなセリフ…ぞくぞくするわ!!「隣りの女」で、壁の向こうから聞こえてくるあるセリフ。こちらも盗み聞きしてる気分になり、たまらない場面だ。向田邦子ワールド,クセになりますな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の作家
- 感想投稿日 : 2023年9月14日
- 読了日 : 2023年9月14日
- 本棚登録日 : 2023年8月29日
みんなの感想をみる