読み終わった。そっか、こんな最後だったっけ。
シュウジという少年が背負わされた過酷な運命を、私も共に駆け抜けた。誰かとつながりたい、ただそれだけのことなのに、どうしていつも私たちは「ひとり」でしかいられないんだろう。シュウジも、エリも。もどかしくて行き場のない気持ちが溢れ、苦しくて苦しくてしかたなかった。「ひとり」と「ひとり」が一緒に生きるって、こんなに難しいことなのか。
読み終わったあとは、それこそ全力疾走したかのように疲労し、息切れしていた。当時、私の世界はここから一変したのだ。
「シュウジ、遠くの町に行っても、これだけは忘れないでください。あなたの憎んだふるさとの片隅の小さな庭に、ヒマワリが咲いていることを。その花は、いつも太陽のほうを向いている、ということを」
送り出すときに神父さんが言ってくれたこの言葉の尊さを思う。誰かが待ってくれているということは、きっと想像を遥かに越え人間を強くする。
シュウジは自分の生を一生懸命に生きた、生き抜いた。それは確かなことだ。
ふるさとでは、今年もまたヒマワリが咲いていて、生が続いている。失われない命がきらめいている。
「伝道の書」第一章。
世は去り、世はきたる。
しかし地は永遠に変らない。
日はいで、日は没し、その出た所に急ぎ行く。
風は南に吹き、また転じて、北に向かい、
めぐりにめぐって、またそのめぐる所に帰る。
川はみな、海に流れ入る、
しかし海は満ちることがない。
川はその出てきた所にまた帰って行く
なんだか「生きるってなんだろう?」「死ぬってなんだろう?」「どうせ死ぬのにどうして生きなきゃいけないんだろう?」とか、そういう原点に立ち返るような素朴な疑問を、ひさしぶりに思い出した。
たとえば俳優の彼は、どうして自死を選んだのだろう。
順風満帆な仕事、充実した私生活、容姿端麗。才能に溢れ未来も明るい恵まれた人生に思える。いったいなにが彼の心から光を奪ったのだろう?彼はずっと「ひとり」だったんだろうか。
考えても答えがわからないことを、それでも考え続けたい。彼が生きた証、命のきらめきを、私はぜったいに忘れない。
- 感想投稿日 : 2020年7月26日
- 読了日 : 2020年7月25日
- 本棚登録日 : 2020年7月25日
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