ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

  • 新潮社 (2019年6月21日発売)
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2019年Yahooノンフィクション大賞受賞作。
カトリック系の人気小学校から、地元ブライトンの荒れた中学校へ進学する息子の成長が描かれている。
けれど、これはただの子育てエッセイではない。
階級格差、移民、政治、差別、ジェンダー平等、LGBTQ、アイデンティティクライシス。
私たちが目を背けてはいけない、これからの未来とは切って切り離せない様々な社会問題が提起されているのだ。
それらに真正面からぶつかっていく息子を、自らも東洋人として差別を受けた経験のあるブレイディみかこさんはあたたかく見守り続ける。
多様性って、とても大変だ。全員が全員気持ちよく生きていける社会をつくることは、とてもむずかしい。
むずかしいけれど、でも理解することはできる。知ることはできる。多様性に対して無知でいることはそれだけで暴力になり得る。
大人になってしまった私たちは、知ることを放棄しがちだ。多様性、と口では認めてもいまいちどういうことなのか分かっていない。
シンパシーではなく「エンパシー」という能動的な力を身につけ、相手の靴を履いて感じる体験が何よりも必要なのだ。
この"ぼく"が通う中学校の子どもたちのように、もっとたくましく柔軟に、イエローにもホワイトにもブルーにも、そしてグリーンでもピンクでも何色にも変わり続けていけるなら。世界はもっと生きやすくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年2月20日
読了日 : 2020年2月16日
本棚登録日 : 2020年2月16日

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