満潮の時刻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年1月30日発売)
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本棚登録 : 438
感想 : 43
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九官鳥、踏み絵など遠藤周作といえばというモチーフが登場する。深い河を読んだときも感じたが何気ない一瞬を切り取り、描写する能力が高いと感じる。光や匂い、登場人物の細かな心情が鮮明に伝わってくる。

病気のためとはいえ、戦中は徴兵に招集されないまま終戦を迎え、生き残ったことを戦死した友人たちに申し訳ないと思う明石。だが、結核に冒され2度3度と訪れる死の恐怖がこれまでの人生の出来事の意義を問い直してくる。

巻末の解説にある通り、キリスト教徒でもなかった明石が踏み絵を想起し、長崎に赴くことは確かに唐突感が否めないが、感動や喜びとはまた違う読後感を味わうことのできる作品になっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月4日
読了日 : 2023年12月4日
本棚登録日 : 2023年11月3日

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