文庫 データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

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  • 草思社 (2018年4月9日発売)
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「幸せは、およそ半分は遺伝的に決まっていることが明らかになった。うまれつき幸せになりやすい人と、なりにくい人がいるということである。」

「それでは、残りの40%は何だろう。それは、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方によるというのだ。特に、自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要なのだ。自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得る。」

「行動を起こした結果、成功したかが重要なのではない。行動を起こすこと自体が、人の幸せなのである。 「行動の結果が成功したか」ではなく、「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決めるというのは、実は、我々一人一人にとっては、とてもありがたいことだ。」

「幸福な人は、仕事のパフォーマンスが高く、クリエイティブで、収入レベルも高く、結婚の成功率が高く、友達に恵まれ、健康で寿命が長いことが確かめられている。定量的には、幸せな人は、仕事の生産性が平均で37%高く、クリエイティビティは300%も高い。  重要なことは、仕事ができる人は成功するので幸せになる、というのでなく、幸せな人は仕事ができるということだ。そして、ハピネスレベルを高めるのは、成功を待たずとも、今日ちょっとした行動を起こすことで可能なのである。」

「明らかになったのは「幸せな人の身体はよく動く」という単純で共通の事実である。  もちろん仕事が違えば、その業務によって、どれだけ動かなければいけないかは変わる。しかし、同じ人で見ると、幸せになると、より動く頻度が増えるというのは、意外な発見である。」

「結論を一言でいえば、「活発な現場」では「社員の生産性が高まる」し、一方「活発でない現場」では「社員の生産性が低くなる」のは普遍的・一般的な傾向である。そして、従業員の集団的な身体運動を加速度センサで計測すれば、現場の活発度が定量化可能なので、さまざまな産業において生産性との関連を確かめることができる。」

「身体を継続的にやや速く動かせるような状況をつくることにより、仕事や生活に楽しさや充実感を得ることが期待される。」

「むしろ、「運こそ実力そのもの」だ。  運という確率に支配されることが人生にも仕事にも存在する。これは誰にも否定できない。むしろ運の要素がなく、機械的にできることは、一般には付加価値の低いことだ。それらは、今や、コンピュータが処理するか、低コストの新興国で行うのが経済的になった。我々が日本で担うべき仕事は、ほぼすべて運をいかに制御するかが成否を決める。」

「「ビッグデータで儲けるための3原則」は、以下のものである。 第1の原則 向上すべき業績(アウトカム)を明確にする 第2の原則 向上すべき業績に関係するデータをヒトモノカネに広く収集する 第3の原則 仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる」

「仮説はデータからコンピュータに創らせましょう」と公言できるようにしたい。

「人との共感や行動の積極性は、人の「幸せ」を決めるものである。共感できたり、積極的だったりすると、その先に幸せが得られやすい、というのではない。共感できたり積極的に行動できたりすること自体が、人のハピネスの正体なのだ。」

「コンピュータの未来像としては、これまでマーク・ワイザーの提唱した「ユビキタス」という概念、すなわち「生活の隅々にコンピュータが溶け込むこと」がたびたび想定されてきた。しかし、これだけでは、コンピュータが人の持つ潜在力を引き出すのに不十分ではないだろうか。」

「として「ホウレンソウ(報告、連絡、相談)」が重要だと教わった。しかし、今後はこれに加え、「マツタケ(巻き込み、つながり、助け合い)」が必要になるという指摘があった。目指すのは、個と全体とを統合して共通の視点が持てる組織であろうか。大量のデータが、組織の科学と工学への道を拓く可能性がある。」

「20世紀の経済発展の原動力となったのが、フレデリック・テイラーに始まる業務の標準化やマニュアル化である。これは大量生産という時代の要請とマッチし、大きな成果を上げたため、「正しいのは、ルールを決めてそれを繰り返し守ること」という考え方が広まっていった。生産性を上げるには、標準化と複製(あるいはN倍化)が必要と多くの人が信じるようになったのだ。この「ルール指向」は、仕事のやり方にとどまらず、社会や組織の運営にまで影響を与えてきた。」

「過去の成功体験が未知の状況において誤った判断に導くことを「過学習」と呼ぶ。」

「AIが置き換えるのは、人の労働ではない。従来我々が頼ってきた「ルール指向」という考え方やそれを支える仕組みを、「アウトカム指向」に置き換えるのである。」

「人の幸福感は、加速度センサによる身体運動のデータを用いることで、客観的に計測と定量化が可能なことを発見したのだ。」

「大事なことには、楽しくない側面があるのが普通である。実は「幸せ」は「大事なこと」に挑戦するための精神的な「原資」になっていたのである。すなわち「ハピネス」は、アウトカムとして設定すべきものであると同時に、我々の活動の原資でもあるのだ。」

「お金だけでは原資として不十分だ。精神的な原資としての「幸せ」が必要なのである。」

「幸せのための方法が人によって違う」と考えるべきで、「幸せ」自体が人により違うのではない。」

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感想投稿日 : 2023年3月15日
読了日 : 2023年3月15日
本棚登録日 : 2023年3月15日

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