時代小説は全く読まないのに、なんとなくのジャケ買い。今の心にスッと入り込むこの「なんとなく」の予感は当たりだった。素朴な味わい深い作品。
主人公、治兵衛とその家族は慎み深く、利他の精神を持った温かい人柄で、麹町の小さな菓子屋「南星屋」を切り盛りしている。
何気なくお菓子をお持たせによく使うけれど、
お菓子は確かに人と人との空気を柔らかくする効果があるよなぁ。と改めて気付かされた。
それが和菓子ともなれば季節やその土地の魅力も合わさってさらに滋味深い。
今よりも身分制度が厳しく、思いがけず理不尽なことも多々あるけれど、もう忘れかけている日本人の美徳がこの家族に溢れている。そのせいか、どんな結末になろうとも、実に清々しい心持ちでいられる。
胸の奥がじんわり温かく沁みる読後感だった。
読書状況:読み終わった
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森の本棚
- 感想投稿日 : 2023年7月2日
- 読了日 : 2023年7月3日
- 本棚登録日 : 2023年7月2日
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