サラバ! (上)

著者 :
  • 小学館 (2014年10月29日発売)
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エジプトについて全く知識がなかったので
主人公、歩の一家同様、「いや、ちょっとエジプト無理かも(汗)」と、かなりカルチャーショックを受けた。
例えば「喜捨」の文化だが、理解できなくてちょっとだけ調べた。
イスラムでは孤児や貧困者に対して、温かいまなざしを持っており、経済的再分配の機能として喜んで施捨する思想があるらしい。
しかし「喜捨」を教えてくれた父親さえ、それを対価として捉えているようなので日本人には戸惑いそうな行いだ。
そんな了見が狭い自分でも読み進めていくうちにエジプトに慣れていき、反比例するように「歩の一家、シンドイ(汗)」と思えてきた。怒りと自己顕示欲の塊のような姉の厄介な日々が懐かしい。

大人になると「何も考えずに過ごしていた子供の頃に戻りたい」と思うことがある。
もう忘れてしまっているけど、あの頃は今よりもずっと繊細で色んなことにもっと敏感だったはずだ。
クレヨンで人気投票とか、誰かを好きになる瞬間とか、そんな友達と気まずくなる瞬間とか
大人には理解できなくなってしまった子供の世界や
自分ではどうにもできないグチャグチャな感情の微妙な部分も言語化されていた。
せつなくも甘い気持ちになった読後感だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 真夜中の本棚
感想投稿日 : 2023年1月1日
読了日 : 2023年1月1日
本棚登録日 : 2023年1月1日

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