朝井リョウさんのエッセイに「ちいかわおじさん」なる人物が出てくるのだが、そのおじさんに対し抱く感情はまさに『蹴りたい背中』であるという。
『蹴りたい背中』を読んでない私は、まだこの感情を知らない。知るべき時がきたということか。
主人公の女子高生、ハツは孤独な高校生活に絶望を感じている。似た者同士と思っていた“にな川”と出会うのだが、彼は全く違う世界線を生きていた。見下していたはずの“にな川”の社会や家族に切り離されても平気で過ごせる無敵さに気味の悪さを感じる一方、憧れにも執着にも似た感情を覚える。
しかし“にな川”の世界にハツは存在していなかった。
それはハツにとって惨めなことではあるが、同時にサディズムを目覚めさせることでもあった。
「傷つく顔が見たい」そして“にな川”の生きる世界に自分もインパクトを与えたいという思いが
『蹴りたい背中』という衝動に繋がったのではないかなぁ、と想像する。
自覚のない虚栄心や地に落ちそうな自己肯定感。視野も心も狭くて息苦しい黒歴史をむき出しにした作品だった。
尖った時代を象徴するような比喩表現もふんだんに使われ、10代にしか描けないであろう勢いがあった。
青春って、キラキラした時代じゃないよ。未熟でしょーもなくて恥ずかしい言動ばかりしてたわ!(あ、今もだけど)と思い出した読後感だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
真夜中の本棚
- 感想投稿日 : 2023年6月5日
- 読了日 : 2023年6月5日
- 本棚登録日 : 2023年6月5日
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