頭のよさとは「説明力」だ (詩想社新書)

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  • 詩想社 (2019年9月11日発売)
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著者は言わずと知れた、齋藤孝氏。

氏は数々の著作を世に出しているが、それと同時に長年、明治大学で教鞭を執っている。
安住アナも氏の教え子である。

著者のいう、「頭の良い説明」とは、次の3つの力によって構成されている。

 1.時間感覚
 2.要約力
 3.例示力

まず、「時間感覚」とは、簡単に言うと、説明時間を意識した説明である。
つまり、無駄にダラダラとせず、要点を要領よくまとめ、極力短時間で説明を終わらせること。

そのためには、説明することの要点を取り出して、体系立てて理解すること、すなわち「要約力」が必要。

要約する際のポイントは、できるだけポイントを絞り込む(ポイントは3つが望ましい)ということ、つまり思い切って切り捨てることが上手な説明をするカギ。

そして優れた説明は、相手方に身体感覚で「わかった感」を生む。
そしてこの「わかった感」は、聞き手の経験や知識を喚起するような説明や、身体感覚を伴うような説明がうまくいくともたらされる。

聞き手にこの「わかった感」をもたらすために必要なのが「例示力」である。

例示力とは、相手がまったくわからないものを、おおよそ分かるもので説明すること。

例えば、英語圏の人たちに「禅」を説明するにはどうしたらよいか。

この難題に素晴らしい回答をしたのが、仏教学者の鈴木大拙である。
そして、大拙の答えは、「let」。

禅というのは、自分が何々をするんだ、こうしてやるのだ、というものではなく、自分を無くして無くして、それを「let」の状態に置くのだということを一言で表したのである。

抽象的でわかりづらい事物を、誰もがわかる一言ですっきりと言い表している。
このような本質を言い表すワンフレーズ、キャッチフレーズをつくることは、説明の技術としてもとても重要。

本書の要約は以上である。

次に、具体的な説明のやり方を2つ紹介する。

◎上手な説明の基本構造◎

①まず、一言で言うと○○です
【本質を要約し、一言で表現。キャッチフレーズ的】
 →聞き手の気持ち(興味)からキャッチフレーズを考える(必ずしも内容の要約である必要はない)

②つまり、詳しく言えば○○です
【要約したポイントを最大で3つ。重要度や、聞き手の求める優先順位を加味して示す】

③具体的に言うと○○です
【例示。エピソード、自分の体験などで補足】

④まとめると○○です
【これまでの説明の最終的なまとめ】



◎通説butの説明法◎

「いままではこう理解されていましたが、実は○○なのです」(通説but)

「それはこういうことです」
(詳しい説明、ポイントは最大3つに)

「たとえば、○○です」
(具体例、エピソード、データなど)

「つまり、こうなのです」
(全体のまとめ)

このほか、ためになったことは、著者が東大法学部の学生時代、法律の勉強法を著者の友人から教わったエピソードである。

著者の友人曰く、法律というのは体系だった学問なので、全体構造を理解しながら体系立てて勉強することが効率的。

そしてその具体的な勉強法は、次のとおり。

 ①教科書の目次をコピーする
 (十分な余白をとって、大きな用紙にコピー)

 ②目次の余白スペースに、目次の項目に付随する事例や判例などを簡単に書き込んで肉付け

 ③仕上げた目次のコピーをそっくり記憶する

②の作業は、目次という大きな骨格に各部を構成する要素を自分で書き込んでいくことであり、この作業をすることで、自分の頭も整理され、全体構造と個々の関連が明確になる。

この技法は何も法律だけでなく、一般書籍の読書などにも応用できそうだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミュニケーション
感想投稿日 : 2021年6月18日
読了日 : 2021年6月14日
本棚登録日 : 2021年6月18日

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