モンテ・クリスト伯 6 (岩波文庫 赤 533-6)

  • 岩波書店 (1956年9月25日発売)
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モンテ・クリスト伯があちこちに蒔いた罠が、いよいよ仇敵たちを追いつめる。

まず最初に舞台から去ったのはカドルッス。
彼はエドモンが陥れられるのを知っていて知らんふりをしていただけなので、他の人たちに対するよりも憎しみは少なかったのだろうか。
最初は落ちぶれていたカドルッス夫妻に大きなダイヤモンドをプレゼントしたりした。
けれどもそれが引き金になって、小悪党だったカドルッスは人殺しの犯罪者になったのだから、やはり復讐するつもりだったのか、それともカドルッスにチャンスを与えたのか。

カドルッスはエドモンの手によってベネデットとともに監獄から抜け出すことに成功したが、その後もやはり人目を避けてのその日暮らしのカドルッスに対して、ベネデットはエドモンの手引きでイタリアの貴族となる。
それを知ったカドルッスがベネデットをゆすり、結果…。
最後まで小悪党だなあと思っていたら、最後の最後に正体を明かしたエドモンの前で、カドルッスは悔い改める。

「これで一人」とは、カドルッスを看取ったエドモンのセリフ。
やはり最初から殺すつもりだったのか?

フェルナンは過去の悪事を暴かれ、それがモンテ・クリスト伯の仕業と知ったフェルナンの息子アルベールはエドモンに決闘を申し込む。
もちろんエドモンはアルベールを殺す気満々なのだ。
フェルナンの血を引いた者をこの世に残しておくつもりはない。
あんなに目をかけてかわいがっていたように見えたのに、それはフェルナンへのつなぎのためではなく、最初から頃好きだったんだ…。

全てを理解したメルセデスが、「エドモン」と呼びかけ、エドモンを死んだと思ってフェルナンと結婚した自身の罪を詫び、息子の命乞いをすることで、エドモンは己の心にまだ人の心が残っていたことを知る。
それにしても、ただメルセデスを愛していただけの田舎の漁師だったフェルナンが、過去にあんな残虐なことを行っていたというのはちょっと唐突過ぎる気もする。
そんな欲まみれの悪党だったとしたら、いくらエドモンの死で心が弱っていたからといってメルセデスがフェルナンと結婚するだろうか。
過去の自分の行いのせいで妻子に去られ、社交界に居場所を失くしたフェルナンは自殺する。

そしてエドモンのせいで財産をことごとく失うことになったダングラールは、財産目当てで、エドモンがでっち上げたイタリア貴族のカヴァルカンティことベネデットと娘の結婚を画策する。
社交界の歴々が集まった婚約披露のその場で、カドルッスを殺した罪でベネデットは警察に追われる。
結婚自体を嫌がり家から逃げ出すダングラールの娘とベネデットの逃走経路がおんなじで、笑っちゃったわ。

さて、次々に家族が死に見舞われたヴィルフォールは、ついに娘も薬を盛られていたことに気づく。
そしてヴァランティーヌを愛するマクシミリヤンもそれに気づき、なんとかモンテ・クリスト伯に助けてもらおうとする。
しかし彼はすべてを知っていながら、助けを差し伸べようとしない。
ヴィルフォールの娘の命なんて、かんけーない。

ところが、エドモンの恩人であるモレル氏の一人息子・マクシミリヤンが仇敵であるヴィルフォールの娘を愛していることを知り、エドモンは、またも運命の皮肉を、または神の摂理を知り、絶望の声をあげながらもヴァランティーヌの命を奪わない決断をする。

で、メルセデスとの会話で若かりし頃の愛情と絶望を思い出したエドモンだが、フェルナンに父を殺されたエデと今後恋愛関係になりそうな予感。
そこまでしなくてもいいのに、サービス精神の旺盛な文豪です。
新聞小説だったというからというのもあるのかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月10日
読了日 : 2022年12月10日
本棚登録日 : 2022年12月10日

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