処女作『刺青』からしてもう、谷崎潤一郎は谷崎潤一郎なのだなと思う。
世界観が確立されている。
『少年』『秘密』しかり。
人の痛みを悦び、秘密に焦がれる性癖。
だけどそれは異端なのだろうか?
自身を異端者と書いているけれど、読む限りそれは異端者であるというより、異端の者になりたい、であるはずの自分だ。
しかし、誰の心にもこのような世界があることを、彼は疑ったことはなかっただろうか?
自分は皆と同じような真っ当な人間ではない、自分はほかの人間とは違う、だけど何者にもなりきれていない今は家族に無頼を気取り、友達には道化てみせる。
普通じゃないですか?
やはり、『刺青』『少年』『秘密』『幇間』あたりが、谷崎潤一郎でなければ書けない文章だろう。
読みながら、なんとなく永井荷風を思い出したりもしたのだけど、谷崎潤一郎は永井荷風の大絶賛を浴びて文壇に送り出されたのですって。さもありなん。
だけど永井荷風は一歩離れて対象物を見ているようなところがあるけれど、谷崎潤一郎は同化していきそうな気配がある。
そこに違いがあると思った。
で、実は『母を恋うる記』が結構気に入っていたりする。
やっぱり異端者ではないよ思うよ。偽悪者ぶりっ子。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年8月27日
- 読了日 : 2014年8月25日
- 本棚登録日 : 2014年8月27日
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