エッセイが好きで、角田光代のものもこれで3冊目なんだけど、他の作家のものと読み比べてみると彼女には澱みがないのが印象的だった。
女性作家のエッセイはともすれば内面を書き出すうちに過去のドロドロや「〜すべきだと思う」みたいなものが多くなってくるが、角田光代にはそういうものを感じない。
人間らしいし、いわゆるさばさば女とは違うし湿度がないわけでもないのに、自分の中の嫌な感情や思い出も「そういうこともあるよね」と割り切っている。
そういうところが読みやすいしとっつきやすい。
深い悩みを相談しても、深刻になり過ぎずに「そうなんだー」と軽く聞き流してくれそうな、でも突き放すわけでもない感じがすごく友達になりたくなる。
本書では外国で高山に登ることになったときの彼女の心の内が「こんなはずじゃなかった、おうちに帰りたい(中略)だいたい私はいつだって読みが甘いのだ……と、さまざまなネガティヴ思考が頭のなかを怒濤のように駆けめぐる。(中略)泣いてもどうにもならないから、泣かずにただひたすら歩き続けたけれど」などと書かれていて私と同じだ!と嬉しくなったりもした。
もっとも角田光代はありえないほどの仕事の量をこなし賞を取り、プライベートでも歯を食いしばっていたりと、私とはまるで違うのだけど。
それでも「私もそうだ!」と思わせてくれる、友達の友達にいそうなのが角田光代なのだ。
この本を読んで、更に彼女のことを知りたくなった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年10月25日
- 読了日 : 2021年10月25日
- 本棚登録日 : 2021年5月7日
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