幼い頃に両親が事故で亡くなった安藤兄弟。景気低迷の中、現政治を批判し、ファシズムを彷彿される主張を大きく掲げる政治家・犬養が若者からの支持を集め、野党による政権交代の機運が高まっていた。
『魔王』の章では、自分が頭の中で叫んだことを半径30歩程度の距離の範囲にいる人間に言葉を発せさせることができる能力をもつ安藤兄の話し。
『呼吸』の章は、安藤弟の妻・詩織の視点から夫・安藤潤也の闘いの序章を語っている。5年前に犬養の街頭演説中に心臓発作で亡くなった兄。兄の死後、弟に備わった能力。その能力を糧に、静かにファシズムに向かっている世の中の立て直し、犬養の失脚を画策し始めるところまでが語られている。
犬養は熱心な宮沢賢治の読者であるため、所々に宮沢賢治の作品の記載がある。宮沢賢治の作品を本作のような視点で読んだことがなかったが、小学生、中学生の時、結構好きだったので、多分ほぼ全部読んだ。幼い時のことなので、私にとっては単純に夢の話であり、特にそれ以外に感じることはなかった。それが、メディアを通じて、時の人が話すことで、世の中の人がこんなにも影響を受ける。メディアの影響力、時の人の発する言葉の世間への影響力、つまりは世の中の人間がいかに自分の意思を持っていないかを思い知らされる。
兄が生前、鳥になって、空を飛んでいたのは、弟が環境調査(希少猛禽類の調査)につながっているのであろうが、弟が感じる兄の気配について、おそらく理解ができていないと、思いながらいつのまにか終わっていた。
これがモダンタイムスを読んで物語が繋がっていくのであろうか?
- 感想投稿日 : 2021年1月2日
- 読了日 : 2021年1月2日
- 本棚登録日 : 2021年1月2日
みんなの感想をみる