冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年8月11日発売)
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本棚登録 : 15494
感想 : 1271
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菅原の名前がないことので、「読み飛ばした?」と、おもって何度も上巻では彼の名前を探したのだが、見つからなかった。このことにものすごく違和感があり、菅原と榊の繋がりを探しながら読んでしまう。そう考えているせいで、言葉がいろいろ引っかかってしまう。

そして下巻の「HERO」を読んで、これは「ヒーロー」ではなくて「ヒロ?」と思い、上巻を読み直してみた。
「彼(鷹野)の口から出た言葉、『菅原』の響きに一瞬耳慣れないものを感じ、…」

「(菅原が)昨日までとは違う、(自分の)立場と目線。自分に決める権利など何もなく、しかし行かなくてはならないことだけを知っている-そう学校へ」
「(菅原は)呼ばれたのが自分なのだという自覚が、ひどくゆるゆると頭に込み上げてくるのを感じる。」

菅原の容姿の箇所では、「さっきから降る雪は傘を持たない自分の茶色い髪の上で落ちては消えていく。どうして俺は、傘を持っていないのだろか。片耳だけのピアスを人差し指で撫でながら、ぼんやりたそんなことを思った。」読み進めるに従い、榊の容姿が「菅原に似てない?読み間違い?」と、また、前のページに戻って、進みを繰り返していた。

が、下巻の「HERO」で、確信に変わった!
読み直しで見て、張られていた伏線の多さに「やられたなぁ。上巻でほぼストーリーが完結していた。。」と、思ってしまった。今回はストーリー負けしなかったかなぁと、少々鼻高さんになる。

一方で、ストーリー以外にも、本作では高校生という未完成な大人の行動、そして成熟している子供の心理が詳細に描写されており、自分の高校時代の感情や思考を回想した。
当時の幼い自分、それでいて大人に見せようと粋がる自分とダブるところも多かった。

そんな中で2020年の小中高生が自殺者数が過去最多の479人であったニュースをみた。自殺の原因・動機では、「進路に関する悩み」「学業不振」、「親子関係の不和」のようで、「いじめ」で亡くなるニュースがクローズアップされるので多いいのかと思いきや、学業や進路など学生ならではの理由が主であることが今更ながら、未然に防げる理由のように感じ残念に思う。
本作のテーマとは異なっていたが、作品の展開に学生の「自殺」があげられることに驚きもなく読めることに落胆する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月17日
読了日 : 2021年3月17日
本棚登録日 : 2021年3月17日

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