エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2009年5月20日発売)
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感想 : 416
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常野物語の第三作目。

第一作目の「光の帝國」で、出てきたオセロ・ゲームの拝島家族の続編で、二作目の「蒲公英草子」より読みやすいが、内容が複雑すぎて、読後の納得感とか満足感というのが、本作においては感じられなかった。もちろん、これは私の理解力と想像力の低さであるが、いくつか登場人物の登場理由、常野と力の関係などわからないところをいくつか残し、いつのまにか結論に至って終わってしまったというのが、正直な感想。

その一つに、本作では父・拝島肇の失踪理由、「裏返す」力の見え方の違いが過去の回想より明らかになるが、なぜこの力が必要となり常野一族に備わったのかが、わからないままであるということだ。

「裏返す」力は、遠耳やしまう力、空を飛ぶ力、未来をわかる力等とは違い、「欲しい」力ではなく、「欲しくはない」力である。
だからこそ、この力を消してしまう存在が必要だと思っていた。そのため、本作での「洗濯屋」の登場は、ストーリー展開として面白く感じた。

「生命の歴史は、突然変異の歴史だ。ある生命体が隆盛を極めると、必ず新しい何かが出てきて次の地位を狙う。主役交代劇は唐突にやってくる。ある日突然、再び次のゲームが始まらないと誰が決められる?」とあるように、暎子は肇に裏返され「裏返す」力を突然手に入れた。洗濯屋は「裏返す」力を包むために備わった力。今後、暎子と高橋の子、時子と火浦に子が誕生した時、その子供達の持つ力は、今の火浦の力や時子の力とは異なる力を持ち、力が世代を超えて進化し、その進化に応じたゲームが繰り返されることを伝えている。

私の予想に反したのは火浦の「あんたたちはある種の精神疾患に反応しているんだと思う。そして、俺は精神疾患-それを疾患と見なすか特質と見なすかは人によると思うが-は、古い生命体の一種なんじゃないかと思う」と、時子に説明をした時、母・暎子の高校同級生で脳外科医の高橋伸久が本当は力があったのではないかと予測したが、見事に外れた。

もしかしたらこの続編が、発表されるかもしれないが、できれば、ソフトな常野一族との関わりをつけて欲しいと、ほんの少し考えてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月4日
読了日 : 2020年7月4日
本棚登録日 : 2020年4月22日

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