ジヴェルニーの食卓

著者 :
  • 集英社 (2013年3月26日発売)
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感想 : 467
4

2013年に本書が発売された時に読んで、久しぶりに再読。結構、内容を覚えていたことに、この本が好きだったことを再認識した。

アカデミズムの呪縛から逃れるように19世紀後半のフランスを中心とし、アカデミズムとは相反する手法、構図、概念を持つ新しい芸術家たちが怒涛の海へと舟を漕ぎ始めた。後に彼らは印象派としてその地位を確立していくことになる。
本作はそんな大海原で苦闘し、それでも自分たちの芸術を勝ち取り、作品として世に残していったマティス、ドガ、セザンヌ、モネの闘いの記録である。


うつくしい墓 La belle tomb
アンリ・マティスの最晩年をお世話することになった少女時代のマリアから見たマティスの回想を70歳となったマリアが語る。

『ダンス』や『マグノリアのある静物』、大原美術館で見た『マルティニックの女』。どれも色彩豊かな絵画が印象的である。

中学生くらいの時に、ダンスなら私にも描けそうかもとどでもないことを考え、父にカンヴァスを取り寄せてもらい模倣したのだが、出来栄えは言うまでもなく、とんでもなくオリジナルとは異なっていた。

エトワール L’etoile
アメリカの女流画家・メアリー・カサットが回想するエドガー・ドガの『踊り子』製作における闘い。

ドガと言えば、繊細(と、いうより線が細い)で気難しそうなイメージが、ドガ自身が描いた『自画像』から感じていた。
実際、性格的にも難しそうではあったのだが、私がイメージする風貌通り彼から生まれる作品は、繊細でその姿、形を忠実に再現しており、また、色彩が柔らかくて実物よりも美しく感じる。
特に『踊り子』、『踊り子たち』は、バレエの持つイメージと相まって、可愛さと美しさに響く作品だと思っている。

作品が出来上がった時に放つオーラが製作過程での凄まじさを感じさせないために、壮絶な闘いを本作で知り今後の作品鑑賞の想いに影響しそうである。

タンギー爺さん Le Pere Tanguy
画材商ジュリアン・タンギーの娘からポール・セザンヌに宛てた手紙。

著者の他の作品でも複数回登場している「タンギー爺さん」ことジュリアン・タンギー。
パリのクローゼル通りで画材店を営む。デビュー間もない貧しい画家たちが画材を購入するためにここにやってくるが、購入した商品の代金を支払う余裕がないため、支払いの代わりに彼らのまだ価値のない作品を預かっていく。そのうちに店内は作品でいっぱいになり画商も営むようになる。
ここタンギーの元にゴーガン、ファン・ゴッホ、モネ、セザンヌなど名高い画家たちがまだ、世に名前が知らしめられていない頃に通っていた。

また、セザンヌは「りんごひとつでパリを驚かせたい」のエピソードがあるように、「りんごの画家」としてりんごの作品が数多い芸術家。


ジヴェルニーの食卓 Une table de Giverny
クロード・モネとその娘・ブランシュの最後の睡蓮製作までの道のり。

印象派の名前の由来になった代表作『印象・日の出』が有名で、私でも知っている。

「自然に対して自分が認識した感覚を表現する」の印象派哲学を一貫して実践した芸術家。本作でも紹介されているが、時間と共に変化する光の変化と季節の移り変わりを作品に残していくため、時間帯や視点を変えて何度も同じ風景を描いている。代表作に『印象』や『睡蓮』シリーズがある。『パラソルをさす女』は、ブランシュだったのだろうか。『昼食』は、ブランシュの母・アリスへの想いが描かれたのであろうかと、私が知る数少ない作品でも、作品にまつわるモネの気持ちを想像することができ、鑑賞の楽しみが生まれた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月7日
読了日 : 2020年8月7日
本棚登録日 : 2020年8月7日

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コメント 1件

りまのさんのコメント
2020/08/08

私は荻須高徳が大好きです。

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