「えらく字数が少ないね」と、横から言われた。しかも160ページほどなので、すぐに終わってしまった。
にもかかわらず、内容は結構、重かった。人間の業がむき出しになったような感覚に陥る。
「コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは―なぜ、こんなむごいことに。 ... Google Booksより」
物語は、女子高生のコウコ(コウちゃん)の現代と、コウコの祖母であるさわちゃんの時代が交互に描写されている。
コウコは母親から天使と言われる。叔父一家がアメリカ転勤となり祖母の世話を母がすることになる。祖母の夜中にトイレに連れて行くことをかって出たコウコは母親から熱帯魚を飼う許可を得、エンゼルフィッシュとネオンテトラを飼う。
本作は、現代のコウコが感じた残虐さと過去の祖母さわこの残虐な行為が交差する。
現代ではエンゼルフィッシュがネオンテトラを攻撃し、殺してしまう残虐さと、最後に残ったエンジェルフィッシュが死んでしまったときの祖母の残虐な行動。
祖母の女学生時代では、祖母の級友に対する異常なほど攻撃的な醜い行動である。
「神様が『私がわるかったねぇって。おまえたちを、こんなふうに創ってしまって』そう言ってくれてらどんなにいいだろう」という。その言葉が、自分たちの罪深さ、しいては人間は罪深さを認めているように聞こえる。
また、物語のエンジェルフィッシュの描写で、あんな小さな生き物ですら、だんだんとエスカレートする残虐さに何故か、人間だけではなく、これが生き物の本来の姿であり、性のような気がした。
隠しておきたい本性を突きつけられたような気持ちになり、それを否定している自分を認める。そんな気持ちに陥いるストーリーであった。
タイトルのエンジェル、エンジェルという意味に被せたコウコと祖母そしてエンジェルフィッシュの醜さ、残虐さを歌っているのであろう。
- 感想投稿日 : 2021年1月31日
- 読了日 : 2021年1月31日
- 本棚登録日 : 2021年1月31日
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