妻に捧げた1778話 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2004年5月16日発売)
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本棚登録 : 2497
感想 : 235
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妻のために毎日一遍ずつお話を書き続けた。本書に収録されたのはそのごく一部。
印象的だったのは妻の言葉。

 入院が一か月以上になり、もはや形成挽回が不可能であるのが明白になった頃のこと。
 …
「わたし、してもらいたいことがある」
 …
「お葬式の名前は、作家眉村卓夫人、村上悦子にして欲しい」
 来られる人がわからないと困るからと理由をつけたが、妻の本心は、共に人生を過ごし、ずっと協力者であったことを証明したいーということだったに違いない。私にはそれが痛いほどよくわかった。
 …
 通夜と告別式の案内のために道筋に立てられた表示板には、そうしるされ、遺体と共に車で会場に向かう私と娘は、ああ出ているね、と言い合ったのだ。告別式で私は、この経緯を参列の方々に申し上げ、了解を乞うたのである。そのとき私の脳裏には、前年の三月に二人で松尾寺に詣ったさい、祈願の札に、病気平癒と書けと私が二度も言ったのに、妻は聞かず、文運長久とだけしるしたことが、よぎっていた。私の協力者であることに、妻は自負心と誇りを持っていたのだ。

 こういう方と一緒になりたいものですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年12月8日
読了日 : 2018年12月7日
本棚登録日 : 2018年12月8日

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