平成のヒット曲 (新潮新書)

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  • 新潮社 (2021年11月17日発売)
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平成とはどんな時代だったか。名曲共に振り返る。

本書は平成という時代を3つに区切り、それぞれミリオンセラーの時代(CD)、スタンダードソング、ソーシャルの時代(SNS)としている。

その中で繰り返し言われるのは昭和から平成にかけて、根性→自分らしさへの価値転換。高度経済成長→崩壊の流れと共に我々の"個性を大事に精神"が前景化。社会に縛り付けられる楔から解放されていったのだろう。ということ。
その弊害として行き過ぎたポリコレなんてのも話題になっているが。

また、平成生まれの自分からしてもこの時代の大きな出来事はやはり大震災だったと思う。
「やらない善よりやる偽善」なる言葉が流行ったのもこの時期からでは。(中居君が言ったと記憶。SMAPの姿が本書でも記されている。)
ずっと考えていたことがある。それは
こういう未曾有の事態(震災、コロナ、戦争)に人類が直面した時、音楽ができることってなんだろう?ということ。その問いが本書でも問われていたのが印象的。
失われた人々を偲んで自粛?チャリティー?少なくとも「日本を元気に」という情緒的だが薄っぺらい
「口当たりの良い希望」からは真実は見えてこない気がする。(それを頭ごなしに否定している訳ではない。)本書ではそんな音楽にできる事は?と言う問いに対して1人1人が皆自己肯定をしよう!というメッセージをもったレディーガガの曲を挙げていた。

思うに、こういう時に本当に大切なのって、
「個人が自分と、または社会と向き合う勇気を与えること」なんじゃないかな。

「可哀想だね〜一緒に頑張ろうね〜」なんて生やさしい慈悲や希望を一方的に与えるだけでは、その渦中にいなかった人がまるで遠くからテレビショーを見ているかのような「希釈された興味」で終わってしまと思う。
「今、僕たちにできる事はなんだろう?」SMAPが言ったフレーズが本書でも記されている。
自分は少なくとも「今、あなたにできる事は?」と問われた方がよっぽど当事者意識を与えてくれると思った。
僕たち(震災に合わなかった、その苦痛を実際に経験していない人たち)が震災に合った人達の苦しみを憶測で判断して、薄味の同情や優しさを一方的に与えるほど愚かな事は無いと思う。

それよりは、希望なんか与える事はできない、それでも少なくともあなたに寄り添うよ。そういうメッセージ。"みんな"ではなく"あなた"に届けることができるような「希望じゃなくて寄り添い」。

新宿で行われたウクライナの反戦ライブも"みんな"ではなく、ひとりひとりに主体性を持って世の中の不安と向き合う力をくれたと思っている。
そんなエンタメをやりたいな。と。

そして令和へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年7月26日
読了日 : 2022年7月26日
本棚登録日 : 2022年7月26日

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