蛇行する月

著者 :
  • 双葉社 (2013年10月16日発売)
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本棚登録 : 917
感想 : 134
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やっぱり巧いと唸った。ホテルローヤルのみ未読だが、ほぼすべての著作が極めて限定された地域を舞台にし、設定も特殊ではない(逆に言うとそう代わり映えしない)のに、小説というツールを使って読み手に何かを感じさせる圧倒的な力が著者にはある。
本作は、6人の女性を異なる時間軸の中で描いた連作短編。中心となるのは親より年上の男性と駆け落ちした順子。ただし順子の目線から描かれた物語はなく、他の女性たちの目と心情を通して順子の人生が浮かび上がってくる。
著者の作品を読むといつも、一点の曇りもない(とまでいかなくとも、せめてそう暗いところのない)幸せなどというものはあり得ないのかという気持ちになる。ここまで辛くなくてもいいんじゃないか、と。本作も同様で、皆が悩み苦しんでいる。けれど同時に、それでも生きる女性を描くことが著者のテーマであるとも思う。例えば、人の親であれば成熟した人格を持っているべきだ、少なくともそうあろうと努力しているはずだ、という常識あるいは期待を覆す在り方をする人間を単に"悪"とは捉えず、そのように生きる者がある、とだけ描く。その視線があるからこそ私は桜木作品を読み続けているのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年4月25日
読了日 : 2014年4月25日
本棚登録日 : 2014年2月19日

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