白光 (光文社文庫 れ 3-6)

著者 :
  • 光文社 (2008年8月7日発売)
3.33
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本棚登録 : 892
感想 : 123
5

一人の幼い少女の死をめぐり、少女の家族・親族や関係者の独白によって事実が語られ真実が明るみになっていく物語。

前読の同著者作品【夜よ鼠たちのために】のレビューでも記したが、著者が描く文章や構成が美しく衝撃的だったため、余韻醒めぬうちにと連読に至った。

本作品の帯には下記文言が綴られている。
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この物語は人間の心の裏側の醜さを隠すことなく書いたミステリーです。
どんでん返しなどはありませんが、非常にあなたを驚愕させる展開が待ち受けています。
覚悟が出来た方から本編にお進み下さい。
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覚悟が決まった今朝方5時半より読書開始、夕刻頃に読了した。

久しぶりに、愛も救いもない作品を読んだ。

読後しばらく経つが、二転三転して辿り着いた衝撃的な結末、結末に至るまでの各登場人物の独白が未だ脳内で遡及されている。きっと私はこの物語を忘れないだろう。それほど心を抉られた。

連城三紀彦、天才だと私は想う。
少なくとも私は本作品で確実に彼のファンになった。
そして今は亡き天才は、私の読書ライフの中で伝説的存在となるのだろう。

解説でも語られているのだが、本作品では『事実』と『真実』は必ずしも同じではないということが描かれている。

各登場人物の語り部は、とても人間らしく主観的で、そこに妬み嫉みが加わることで、思い込みや保身欲も混ぜ合わさった各々の『事実』が創り出される。

無論、それぞれの『事実』は自己都合により形成されているため、各々によってイロもカタチも異なる。
よって『結果』はイコールであっても『真実』とイコールになるとは限らないのだよと、勝手ながらも私は同調しつつ、著者からのメッセージとして受け取った。

愛も救いもない人間観は決して俯瞰ごとではないこと、そして自身の人間観を今一度再確認されたい方に、是非ともご一読いただきたい作品である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年10月17日
読了日 : 2021年10月17日
本棚登録日 : 2021年10月17日

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コメント 7件

shukawabestさんのコメント
2021/10/17

shukawabestです。2作続けて5つ星ですね。私もakodamさんと同じく連城三紀彦未読ですが読んでみようと思います。また、いい本に出会えそうな気がします。

akodamさんのコメント
2021/10/17

shukawabestさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

最近高まっていたミステリ欲求期と、私の好みがジャストに交わったタイミングも、評価に影響しているとは思います。兎角、久々に衝撃を受けました。

ご興味ありましたら是非ご一読ください。

NORAxxさんのコメント
2021/10/17

akodamさん、こんばんは。
今回も心響く素敵なレビューでした。ありがとう、ありがとう。ありがとう。

連城三紀彦作品、子供の頃に読んでそれっきりでした。今になって読んだら何を思うのだろう...。全く!!私の欲求までをもくすぐってからに!!笑

akodamさんのコメント
2021/10/18

NORAxxさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

『ありがとう×3』Vol.2いただき光栄です✳︎

そしてNORAxxさんが子どもの頃に連城三紀彦読んでたことに、おじさん驚きです…

この作品読み終えた時、ふと(暗黒書物大好きマンは本作を読んだことあるのだろうか)と勝手に妄想しておりました。もしまだなら是非!

NORAxxさんのコメント
2021/10/18

暗幇(アンパン)マンはこちらの作品読んだ事ありません。早速次回からの本屋、古本屋さん巡りではラ行を血眼になって探したいと思います(ง ˙-˙ )ง!!
ふふふ、楽しみが増えました。ありがとうございます☆

akodamさんのコメント
2021/10/18

NORAxxさん
もはやアンパンマンになっちゃってる!
私も今まで本屋、古本屋さん巡りでは【や行】までの探索で終わってましたが今後は【ラ行】まで拡大します!

akodamさんのコメント
2021/11/07

ミキマルさん、こんばんは。
既に読書中でしょうか。
しっかと覚悟を決めてお楽しみください^ ^

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