一人の幼い少女の死をめぐり、少女の家族・親族や関係者の独白によって事実が語られ真実が明るみになっていく物語。
前読の同著者作品【夜よ鼠たちのために】のレビューでも記したが、著者が描く文章や構成が美しく衝撃的だったため、余韻醒めぬうちにと連読に至った。
本作品の帯には下記文言が綴られている。
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この物語は人間の心の裏側の醜さを隠すことなく書いたミステリーです。
どんでん返しなどはありませんが、非常にあなたを驚愕させる展開が待ち受けています。
覚悟が出来た方から本編にお進み下さい。
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覚悟が決まった今朝方5時半より読書開始、夕刻頃に読了した。
久しぶりに、愛も救いもない作品を読んだ。
読後しばらく経つが、二転三転して辿り着いた衝撃的な結末、結末に至るまでの各登場人物の独白が未だ脳内で遡及されている。きっと私はこの物語を忘れないだろう。それほど心を抉られた。
連城三紀彦、天才だと私は想う。
少なくとも私は本作品で確実に彼のファンになった。
そして今は亡き天才は、私の読書ライフの中で伝説的存在となるのだろう。
解説でも語られているのだが、本作品では『事実』と『真実』は必ずしも同じではないということが描かれている。
各登場人物の語り部は、とても人間らしく主観的で、そこに妬み嫉みが加わることで、思い込みや保身欲も混ぜ合わさった各々の『事実』が創り出される。
無論、それぞれの『事実』は自己都合により形成されているため、各々によってイロもカタチも異なる。
よって『結果』はイコールであっても『真実』とイコールになるとは限らないのだよと、勝手ながらも私は同調しつつ、著者からのメッセージとして受け取った。
愛も救いもない人間観は決して俯瞰ごとではないこと、そして自身の人間観を今一度再確認されたい方に、是非ともご一読いただきたい作品である。
- 感想投稿日 : 2021年10月17日
- 読了日 : 2021年10月17日
- 本棚登録日 : 2021年10月17日
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