連続幼女誘拐事件を追うキャリア組捜査一課長・佐伯と、新興宗教にハマっていく謎の男・松本の視点が交互に描かれながら、真相に迫っていくミステリー。
私にとっては長きに渡って積読させていた貫井徳郎作品。初読は数冊一括購入した時から何となく本作品の慟哭と決めていた。
ズバリ、表題名・文体・ストーリー・トリック・読後感、すべてにおいて期待を超えた。
それは特段の警戒心もなく、純心な状態で【慟哭】を探し続けた結果なのかもしれない。
誰が、いつ、何が起きて、声をあげて激しく嘆き泣き喚くのか。
犯人を追う佐伯。
宗教に救いを求める松本。
互いに影の部分を持ちつつ、交互に進行していく展開にはとても惹き込まれた。
そして、最後の最後にやってきた慟哭。
心の中の叫び声が聞こえた気がした。
とても切なく、救いのない結末だった。
わたしも2児の親。
もしも本作のような被害者の親という立場に立たされた時、果たして自分を保てるだろうか。
残され悲しみに暮れる家族を毅然と勇気付け守れるだろうか。
想像の域を出ないが、恐らく最後まで慟哭に明け暮れる頼りのない父親がそこにいるだろう。
しかしながらまた1人、貫井徳郎という面白い作家と出逢ってしまった。困った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年7月25日
- 読了日 : 2021年7月25日
- 本棚登録日 : 2020年8月1日
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