「開高健」のノンフィクション作品『ベトナム戦記』を読みました。
「横木安良夫」の『ロバート・キャパ最期の日』に続きノンフィクション作品です。
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この本は1964年末から65年初頭にかけて、「開高健」がサイゴンから『週刊朝日』に毎週送稿したルポルタージュを、帰国した「開高」自身が大急ぎでまとめて緊急出版したものである。
最前線はどこですか、どこですかと聞いて、そのたびにたしなめられた。
全土が最前線だというのがこの国の戦争の特徴である。
ベン・キャットも最前線ならサイゴンのマジェスティック・ホテルだって最前線である。
いつフッとばされるかわからないのである。(本文より)
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「開高健」が、1964年から1965年にかけて約100日間をベトナムで過ごし、サイゴンの街や戦場の模様をルポルタージュした作品です。
■日ノ丸をいつもポケットに…
・ベトナムの匂いはすべて"ニョク・マム"
・どこへ行っても必ず従軍僧と"憂国筆談"
・十七度線国境附近と、そこに住む人びと
■ベトナムのカギ握る?仏教徒
・統一力を持つのは仏教徒とベトコンだけ
・記者を東奔西走させる怪情報
・烈日の下、八日間のクーデター
■ベトナム人の“7つの顔”
・ベトナム人はユーモアが好きである
・ベトナム人は寛容であり、短気である
・ベトナム人の十七歳には、すぐ火がつく
・ベトナム人は命を粗末にする
・ベトナム人には三つの性格がある
・ベトナム人の心は複雑で、ベトナム人自身にもよくわからない
・ベトナム人には、こんなことが起る
■“日本ベトナム人”と高原人
・「アメリカも、ベトコンもベトナムから出て行け」
・「……日本人は殺さない、……尊敬している」
■ベトコン少年、暁に死す
■“ベン・キャット砦”の苦悩
・ジャングルの海に漂う砦と兵と人
・砦の床下にまでおよぶ、ベトコンのトンネル
・すべてがつかれきっている、すべてが……
■姿なき狙撃者!ジャングル戦
■ベトナムは日本に期待する
・爆撃、砲撃が農民をベトコンに走らせる?
・戦争は階段を一つ上がった、どこへ行くかアメリカ
■あとがき
■解説 限りなく"事実"を求めて(日野啓三)
写真レイアウト/三村淳
最前線での戦場のリアルな状況(帯同したベトナム軍の第一大隊は、200人のうち、たった16人になってしまったとのこと… 過酷な戦場で良く生き残れたなぁ… )だけでなく、ベトナム人の気質や慣習が、食から排泄、性に至るまで… そして、北部、中部、南部での違い等を含め、豊富な語彙を活かし、わかりやすい文体でレポートしてあり、50年前の作品にも関わらず読みやすく仕上がっていましたね、、、
しかも、軍人(ベトナム軍&アメリカ軍)から、僧侶、元日本兵(終戦後もベトナムに残りベトミンとして独立戦争に従軍)、大学教授、遺跡で出会った青年(実はベトコン?)、山岳民族、ダム工事(日本工営)の日本人 等々… 様々な人々と接触し、ベトナムという国や、そこに住む人々、文化や歴史に至るまで、多面的に情報を収集してあり、信頼性の高い内容に仕上がっている印象を受けました。
特筆すべきは、ベトナム戦争の初期の段階において、南ベトナムの敗北… アメリカも撤退せざるを得なくなると洞察したところかな、、、
アメリカの介入により、南ベトナムの内戦が北ベトナムの介入を招き、結果的にはアメリカ対共産勢力というカタチに変質… 農民は村を焼かれてベトコンに走る。
やがて、親米主義者も反米主義者に変貌して行き… 次第にベトナム人は「外国嫌い」になってしまう、、、
これは、日本が大東亜戦争戦争で中国大陸でやったことの繰り返し… と予想しています。
数年後、それが現実になったもんなぁ… 鋭い洞察力ですね、、、
「開高健」… 他の作品も読んでみたくなりました。
- 感想投稿日 : 2022年9月17日
- 読了日 : 2016年5月30日
- 本棚登録日 : 2022年3月11日
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