チグリスとユーフラテス 下 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2002年5月17日発売)
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「新井素子」の長篇SF作品『チグリスとユーフラテス〈上〉〈下〉』を読みました。

「新井素子」の作品は1年半前に読んだアンソロジー作品『NOVA 2019年春号』に収録されている『やおよろず神様承ります』以来ですね… 久しぶりのSF作品です。

-----story-------------
〈上〉
遠い未来。
惑星ナインへ移住した人類は、人工子宮を活用し、世界に繁栄をもたらした。
だが、やがてなんらかの要因で生殖能力を欠く者が増加し、ついに“最後の子供”「ルナ」が誕生してしまう。
滅びゆく惑星にひとり取り残された「ルナ」は、コールド・スリープについていた人々を順に起こし始める。
時を越え目覚めた者たちによって語られる、惑星ナインの逆さ年代記。
第二十回日本SF大賞受賞作

〈下〉
“最後の子供”「ルナ」は、ついに“ナインの創始者”「レイディ・アカリ」のコールド・スリープを解いてしまう。
四世紀にわたる眠りから覚めた彼女に、「ルナ」は問う。
最後の子供になると知りながら、なぜ母親は自分を産んだのかと。
だが、覚醒したアカリがとった行動は、思いもよらないものだった…。
生の意味を問い直し、絶望の向こうに確かな希望を見出す、感動の超大作。
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「集英社」の『小説すばる』の1996年(平成8年)4月号から1998年(平成10年)7月号に断続的に掲載され、1999年(平成11年)に書籍化… この年の第20回日本SF大賞を受賞した他、第12回「山本周五郎賞」の候補作にも推された作品です。

〈上〉
 ■1st マリア・D
 ■2nd ダイアナ・B・ナイン
 ■3rd 関口朋実(トモミ・S・ナイン)
 ■あとがき

〈下〉
 ■4th レイディ・アカリ
 ■あとがき
 ■解説 大沢在昌


上下巻で約850ページのボリュームですが、面白かったので意外とサクサク読めちゃいました… 下巻はちょっと冗長な感じはしましたけど、幕切れが印象的だったので、読後感はスッキリでしたね。


遠い未来… 地球からの移民政策が失敗した惑星ナインに、たった一人取り残された“最後の子供”「ルナ」が問いかける、、、

生の意味… 絶望の向こうに、真実の希望を見出すSF超大作。

地球から他星系への惑星間移民が行われるようになった遠い未来。9番目の移民惑星である惑星ナイン、、、

船長「キャプテン・リュウイチ」、その妻「レイディ・アカリ」を含む30余名の移民船のクルーたちはナインに定着し、いっしょに運んできた凍結受精卵、人工子宮を用いて人口120万人を擁するナイン社会を作り上げた… しかし、原因が判らないままナインの社会では新生児が産まれにくくなり、人口が減少しはじめ、ついに“最後の子供”「ルナ」が生まれてしまう。

たった1人、ナインに取り残された「ルナ」は、重度の怪我や治療法が確立されていない病気で、未来の治療に希望を託してコールドスリープしていた人間を順番に起こし始める… 「ルナ」は、自分が最後の子供になると知りながら、母親は何故自分を生んだのかを問いかける。

「ルナ」と4人の女たち… 「マリア・D」、「ダイアナ・B・ナイン」、「関口朋美(トモミ・S・ナイン)」、「レイディ・アカリ(穂高 灯)」により、逆順にナインの400年の年代記が語られて行く、、、

5人の女性の生きざまがそれぞれに生々しく描かれているだけでなく、コールドスリープから起こされた人々の語る日々が現代社会が抱える身近な問題を象徴するような事柄ばかりなので、意外と感情移入しやすかったですね。

扱っているテーマは凄く壮大なのに、何だか身近に感じてしまう… 地球の未来を予見しているような不思議な感覚で読み進めることができましたね、、、

子孫を残すこと、生きる目的等、珍しく哲学的なことも考えさせられたし、作品の世界観も大好きだし… 色んな意味で魅力に溢れた作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>SF/ファンタジー(国内)
感想投稿日 : 2023年7月21日
読了日 : 2021年3月26日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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