黒い画集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1971年11月2日発売)
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「松本清張」の短篇集『黒い画集』を読みました。

『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』に続き「松本清張」作品ですね。

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身の安全と出世を願う男の生活にさす暗い影。
絶対に知られてはならない女関係。
平凡な日常生活にひそむ深淵の恐ろしさを描く7編。
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以下の7篇が収録されていますが、、、

 ■遭難
 ■証言
 ■天城越え
 ■寒流
 ■凶器
 ■紐
 ■坂道の家

『遭難(映画タイトル:ある遭難)』、『証言(映画タイトル:あるサラリーマンの証言)』、『天城越え』、『寒流(映画タイトル:黒い画集 第二話 寒流)』の4作品は映像化作品を観たことがありましたが、いずれも映像化作品が面白かったので、原作も愉しく読めました。


『遭難』は、鹿島槍登山中に遭難した弟「岩瀬秀雄」の死に疑念を感じた姉「岩瀬真佐子」が、登山経験のある従兄「槇田二郎」に真相究明を依頼する物語、、、

パーティーのリーダー「江田昌利」の行動や判断に不信感を抱いた「槇田」は、「秀雄」の弔いを理由に、「江田」を誘い出し、二人で冬の鹿島槍に登山… 遭難時のルートや時間を再現し、偶然の積み重ねによる作為的な行為があったことを証明し、動機を含めた真相を突き止める。

しかし、「江田」の方が一枚上手だったようですね… 山岳小説としても充分愉しめるクオリティでしたね。


『証言』は、エリート銀行員「石野貞一郎」が、殺人の容疑をかけられた自宅近所に住む男「杉山孝三」が無実であることを証明できるアリバイを知りながら、自分の保身のために証言を偽る物語、、、

不倫を隠すために嘘の証言をするが、結局、嘘は嘘に復讐されるというオチ… 実際に在りそうな物語だけに怖いですねぇ。


『天城越え』は、印刷業を営む男性が、三十数年前の少年だった頃に家出をして歩いて天城越えをしていたときに遭遇した事件を回想する物語、、、

天城峠の道を湯ヶ島方面へ引き返した少年の気持ち… わかるような気がしますね。

登場人物が限られているので、真相はある程度予想できる展開ではあるものの、やはり真相を知ったときはショッキングでしたね。

回想する物語でありながら、当時、捜査に携わった刑事の執念の物語でもありました。


『寒流』は、某銀行の支店長「沖野一郎」が、上司である常務の「桑山英己」に愛人「前川奈美」を横取りされてしまう物語、、、

「沖野」は総会屋等を使って「桑山」への復讐を準備するが、狡猾な「桑山」が一歩先回りして「沖野」の計画を未然に防止… 「沖野」は、社内で暖流である派閥から外れ、寒流に押し出されてしまう。

しかし、「沖野」は、元秘密探偵社の「伊牟田博助」と組んで「桑山」の愛車キャデラックを使った罠を仕掛ける… スッキリするエンディングでしたが、良く良く考えてみると、「沖野」の行動も家族の視点からは悪行なんですよねぇ。


『凶器』は、物的証拠(凶器)が発見されないことから、容疑者を追い詰めることができなかった、ある小さな村で起きた殺人事件を描いた物語、、、

時効後に刑事が凶器に気付くのですが、それは意外なモノだったですねぇ… まさか、凶器を村人や刑事で食べていたなんて。

真相が判明する最後の三行が面白かった… 短い作品でしたが愉しめましたね。


『紐』は、多摩川の河原で絞殺死体で発見された岡山(津山)の神主「梅田安太郎」の死の真相を巡る物語、、、

首に四重に巻かれたビニール紐が丁寧に巻かれていたり、死後仰向けにして一定時間を経過後にうつ伏せにされていたり、両手足が日本手拭いでくくられていたり… 等々、様々な特徴があったが、犯人を特定するまでに至らなかった。

「安太郎」殺害前から行方不明となっており、心配して上京していた妻や、「安太郎」が身を寄せていた姉夫婦にも嫌疑がかかるが、それぞれには完璧すぎるアリバイがあったのだ、、、

その後、「安太郎」には多額の保険金がかけられていたことが判明し、再び、妻や姉夫婦に嫌疑が… 生命保険会社の調査課は妻と義兄の共謀だったと推理するが、それを受けた警察では妻と姉と本人の共謀と推理、そして真実は… 最後の四行で判明する結末には驚きましたねぇ。

この事件そのものが、殺された夫が、ある人物を陥れるために仕掛けた計画だったとは… 命を懸けた復讐ですね。


『坂道の家』は、キャバレー勤の若い女性に嵌ってしまった四十代の男性が、情痴の道を転がり落ちて行く物語、、、

吝嗇で僅かな出費も惜しんで、コツコツと貯めた財産を、一人の女のために使い込み、店も家族も捨て、そして命まで奪われる… 読んでる側の立場だと、何でこんなことになっちゃうんだろう、もっと早く立ち直れたんじゃないのかなぁ… と感じるのですが、愛憎や嫉妬、情念の入り混じった当事者には、そんな余裕はないんでしょうね。

人生なんて、脆いものですねぇ。



既知の作品が多かったけど、全編愉しめました、、、

短篇、中篇合わせて700ページ以上… 量的にも読み応えがありましたね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(国内)
感想投稿日 : 2022年7月10日
読了日 : 2014年7月18日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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