「阿川弘之」を代表する作品のひとつ『雲の墓標』を読みました。
「阿川弘之」の著作はエッセイの『エレガントな象 ―続々 葭の髄から』以来なので、約1年半振りですね。
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青年たちは何を想い散ったのか。
史上最悪の戦術の犠牲となった特攻兵の清廉な魂を描く。
昭和文学の金字塔。
太平洋戦争末期、南方諸島の日本軍が次々に玉砕し、本土決戦が叫ばれていた頃、海軍予備学生たちは特攻隊員として、空や海の果てに消えていった……。
一特攻学徒兵「吉野次郎」の日記の形をとり、大空に散った彼ら若人たちの、生への執着と死の恐怖に身をもだえる真実の姿を描く。
観念的イデオロギー的な従来の戦争小説にはのぞむことのできなかったリアリティを持つ問題作。
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海軍予備学生で特攻隊員の「吉野次郎」が、応召されてから特攻隊員として出撃するまで… 入隊直後の戸惑いから、徐々に海軍の雰囲気に馴染み、洗脳され、特攻隊のひとりとして出撃するまでの日記及び手紙と、同期だが、常に軍隊の考え方に疑問を持ち、反戦的な考え方を貫いた「藤倉」の手紙で構成されています。
ドラマティックな展開はなく淡々とした筆致の作品なのですが、それが逆にリアル感を醸し出していて、作品の中に引き込まれて行く感じがしましたね。
貴重な両親との面会シーンにじ~んとなったり、
辛い軍隊生活で些細なことを幸せに感じるシーンをしんみりしたり、
特攻隊員の発表で、自分の名前が呼ばれなかったことにほっとしたり、
自分が、もし同じ立場で応召されたら、「吉野」のように考え、行動したんだろうなぁ… と感じながら読み進めた感じです。
雪が徐々に降り積もるように、静かにじんわりと、そして少しずつだけど確実に感動が込み上げてくる作品でした。
さすが戦争文学の傑作と呼ばれる作品だけありますね。
戦争のことを知ることは大切だと思います。
今の時代に生きていることを幸せだと思わなきゃいけないですねぇ。
でも… 読んでいると感情移入し過ぎてしまい、気持ちが沈みがちになっちゃいましたね。
- 感想投稿日 : 2022年6月18日
- 読了日 : 2014年1月6日
- 本棚登録日 : 2022年3月11日
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