「沢木耕太郎」の処女長編『血の味』を読みました。
「中学三年の冬、私は人を殺した。ナイフで胸を一突きしたのだ。」という衝撃的な文章で物語は幕を開けます。
なぜ殺人を犯したのか、誰を殺したのか… それが明示されないまま、物語は殺人が起きる二ヶ月前まで時代を一気に遡り、少年時代の回想が始まります。
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「中学三年の冬、私は人を殺した」
二十年後の「私」は、忌まわしい事件の動機を振り返る―熱中した走幅跳びもやめてしまい、退屈な受験勉強の日々。
不機嫌な教師、いきり立つ同級生、何も喋らずに本ばかり読んでいる父。
周囲の空虚さに耐えきれない私は、いつもポケットにナイフを忍ばせていた…。
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心理描写が繊細かつリアルで、ついつい感情移入してしまうところは、さすが沢木作品。
まるで自分が主人公になったかのような、そんな錯覚を感じながら、どんどん先を読みたくなる… そんな作品でした。
でも、ナイフが人に刺さるシーンの表現があまりにリアルで、、、
なんだか自分が人を刺したような気になってしまい… ちょっと気持ち悪くなりそうでしたね。
それだけ、入り込んでしまう作品でした。
こんなの久しぶりですね。
でも、読後が何かスッキリしない。
その理由は、なぜ殺人を犯したのか… という疑問が、自分の中で理解できていないからなんですよねぇ。
最後の最後に、訳のわからない場所に放り出されたような、、、
そんな感覚を抱いたままエンディングを迎えてしまいます。
母と妹が戻って行った、「あそこ」も謎のままだし、、、
答えのヒントは物語の中にあるような気がするのですが、私にはわかりませんでした。
気になって仕方ないので、現在、再読中です。
- 感想投稿日 : 2022年4月1日
- 読了日 : 2008年4月24日
- 本棚登録日 : 2022年3月11日
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