緋色の記憶 (文春文庫 ク 6-7)

  • 文藝春秋 (1998年3月10日発売)
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アメリカの作家「トマス・H・クック」の長篇ミステリ作品『緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)』を読みました。

『石のささやき』に続き、「トマス・H・クック」作品… 『東西ミステリーベスト100』で海外篇の94位として紹介されていた作品です。

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ニューイングランドの静かな田舎の学校に、ある日美しき女教師が赴任してきた。
そしてそこからあの悲劇は始まってしまった。
アメリカにおけるミステリーの最高峰、エドガー賞受賞作。
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1996年(平成8年)に発表された作品… 『石のささやき』が、やや消化不良だったこともあり、エドガー賞を受賞した本作品には、ちょっと期待して読みました。

ある年の夏、コッド岬にあるチャタムの町のバス停に、ひとりの婦人が降り立った… 婦人は緋色の鮮やかなブラウスを身にまとっていた、、、

名前を「エリザベス・ロックブリッジ・チャニング」というその女性は、美術教師として、この町にあるチャタム校に赴任してきたのだ… 「ヘンリー・グリズウォルド」は厳格をもってなる父親でチャタム校の校長「アーサー・グリズウォルド」とともに彼女を出迎えていた。

その美しさと世界中を旅しながら暮らしてきたという彼女の話に、15歳の少年だった「ヘンリー」は心を奪われた… しかし、そんな夢を見ていたのは、彼だけではなかった、、、

それが悲劇の始まりになる… 「エリザベス」の存在は、平穏そのものだったこのニューイングランドの保守的な町に災いをもたらすことになってしまう、、、

美しい新任教師が同僚で英文学教師「レランド・リード」とただならぬ恋に陥ったことからやがて起きる「チャタム事件」… 人生の晩年を迎え、老弁護士となったたわたしは、幼き日々への懐旧をこめて回想する恐ろしい冬の真相とは?

「チャタム事件」を知る人が、ほとんどいなくなった頃、「ヘンリー」が、かつてのチャタム校で起こった事件を回想するという展開… 事件があったことが事前に明かされ、その事件が「エリザベス」と「レランド」の不倫に起因する陰惨な出来事だということは示唆されつつも、なかなか真相がわからない緩やかな展開で、ややモヤモヤとする独特のリズム感がある作品でした。

それにしても、哀しくてやりきれない真相でしたね… 「ヘンリー」は、「エリザベス」が「レランド」と駆け落ちできたらいいと願い、その障壁となっているのは「レランド」の妻「アビゲイル」にあると思い込み、「アビゲイル」の琴線に触れてしまう不用意なひと言を発してしまうんですよねぇ、、、

この「ヘンリー」の何気ないひと言が、「アビゲイル」を激高させ、結果的に「エリザベス」と間違えて「サラ」を轢き殺すことになり、クルマとともに池に落ちた「アビゲイル」は溺死… しかも、池に潜った「ヘンリー」は、「アビゲイル」をクルマに閉じ込めるという所作まで、そして、それがきっかけで「レランド」は自殺し、「エリザベス」は糾弾され、実刑を受けた後、刑務所で死亡してしまうんですからね。

うーん、辛い… 印象的な作品でしたが、本作品もミステリというよりも、現代文学っぽい感じでしたね。



以下、主な登場人物です。

「ヘンリー・グリズウォルド」
 チャタム校の生徒

「アーサー・グリズウォルド」
 チャタム校の校長。ヘンリーの父

「ミルドレッド」
 ヘンリーの母

「エリザベス・ロックブリッジ・チャニング」
 チャタム校の美術教師

「レランド・リード」
 チャタム校の英文学教師

「アビゲイル」
 レランドの妻

「メアリ」
 レランドの娘

「サラ・ドイル」
 グリズウォルド家のメイド

「アルバート・パーソンズ」
 州検事

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(海外)
感想投稿日 : 2023年2月7日
読了日 : 2018年11月26日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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