善の研究 (岩波文庫)

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感想 : 86

 とうとう『善の研究』を通読できた。学生のときに第一編の「純粋経験」のところで挫折してしまってから、読めないままここまできてしまった。哲学という学問が明治以降に伝わって以来初めての本格的な哲学書、そして西田幾多郎の主著ということで、「どのようなことが書かれているのだろう、どのようなことを考え本書を書いたのだろう」といったことを直接読んで学びたかったので、ちょっとホッとした。

 本書は、第一編「純粋験」、第二編「実在」、第三編「善」そして第四編「宗教」の四編から成っている。著者みずから序において、「第一編は余の思想の根柢である純粋経験の性質を明にしたものであるが、初めて読む人はこれを略する方がよい」としているが、確かに哲学のワードや考え方にあまり馴染みのない人は、第二編以下を先に読んで、その後に第一編に戻るのが良いかもしれない。確かに全編を読み通すと、純粋経験というものが第二編以下で論じられていることの根底にあって、そのために純粋経験について著者が考えに考えた意義が分かってくるのだが、初めから純粋経験とは何々と言われても、正直??だと思う。

 プラトンやアリストテレスから、デカルト、スピノザ、バークリー、カント、フィヒテやヘーゲル、またほぼ同時代といっても良いであろうマッハ、ウィリアム・ジェームズなどの西洋哲学・思想に、またウパニシャッド哲学や仏教などの東洋思想にも正面から向き合い、独自の考察を深めていった西田に感嘆の思いを持った。

 残念ながら純粋経験の内容を始め良く分からないところも多々あったので、二読、三読に挑戦してみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年4月9日
読了日 : 2024年4月9日
本棚登録日 : 2024年4月9日

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