ようやく扉を開けたウォレスは、他の誰も入ってゆけない彼だけの楽園を見つけたろう。しかしそれは、マッチ売りの少女が最後にみる夢ではない。現世の栄華をきわめ成功した(と人からは思われている)男の望みが、少年の日の失われたファンタジーだったというのがいかにもありそうなことでも、では幻のために実人生を捨てる者は何人いるだろうか。ウォレスは、義務から解放されて自分の望みを追ってゆくだけの気高さを持つ者なのだ。この物語が、読む人の心にずっと消えない何かを残すのはそのためだろう。感傷的なだけではこうはゆかない。
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- 感想投稿日 : 2022年6月26日
- 読了日 : 2022年6月26日
- 本棚登録日 : 2022年6月26日
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