柚月裕子『慈雨』集英社文庫。
文庫化されたので再読。文庫化で楽しみなのは解説であるが、本作の解説は元さわや書店の松本大介さん。松本さんは夏目漱石の『夢十夜』を引き合いに出し、面白い視点で本作の構成に隠された秘密を見事に解説してくれている。
重たくも、何とも凄い警察小説だ。新しい形の警察推理小説と言っても良いだろう。
過去の事件への贖罪の念に苛まれる元刑事を中心とした人間ドラマと共に現在進行形で進展する事件のどちら共に目が離せない展開の面白さ。晴れやかな気持ちになる感動のラスト。読み返しても非常に満足のいく作品であった。
定年退職した刑事・神場智則は妻と共に42年の警察官人生を振り返る遍路旅の途中、16年前の事件と酷似した幼児殺害事件の発生が発生する。16年前の事件が冤罪であることで贖罪の念に苛まれる神場は旅先から非公式に警察の捜査に協力することに…
清水潔の『犯人はそこにいる』に描かれた北関東連続幼女誘拐殺人事件に酷似した事件が、この小説の根幹を成しており、16年前の事件に苦しめられながらも、未だに事件解決に執念を燃やす男たちの姿が素晴らしい筆致で描かれている。
本体価格760円
★★★★★
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
コミック
- 感想投稿日 : 2019年5月10日
- 読了日 : 2019年5月10日
- 本棚登録日 : 2019年5月8日
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コメント 2件
黒猫ぽちさんのコメント
2019/12/28
ことぶきジローさんのコメント
2024/03/02