悪夢の行方: 「読楽」ミステリーアンソロジー (徳間文庫 と 16-16)

  • 徳間書店 (2016年1月7日発売)
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文芸誌『読楽』に掲載されたミステリーアンソロジーの第2弾。今回は、伊岡瞬、黒崎視音、梓崎優、高嶋哲夫、西村健の5人の作家が描いた一癖も二癖もある奇妙なミステリー短編を収録。

いずれも奇妙なミステリーであり、一定水準に到達しているのだが、第1弾の『地を這う捜査』の方が粒揃いだったように思う。伊岡瞬、梓崎優が頭ひとつ抜けていたくらいで、どんぐりの背比べという感じだった。黒崎観音、高嶋哲夫などは作品のフィールドが違うような気がした。

伊岡瞬『ふたつのシュークリーム』。タイトル、ストーリーともに一風変わったミステリー。家人が不在の家で起きた未解決の老女の殺人事件が、警察関係者のインタビュー形式で語られる。二転三転の展開の果てに辿り着いた結末とは…

黒崎視音『逢魔ヶ時』。柔らかく、暖かい、ファンタジックなミステリー。主人公の6歳の少女が不思議な猫のポンロクと共に大事件の犯人を追う。最後の最後に主人公が発した言葉が、なんとも言えない余韻を残す。

梓崎優『嘘つき鼠』。バルカン半島を舞台にしたミステリーらしからぬこのアンソロジーの中では最も異質のミステリー。この作家には異国を舞台にした不思議なテイストの作品が多いが、この短編でも、不思議なテイストが味わえる。

高嶋哲夫『連鎖』。ひとつの犯罪が次々と連鎖するかのように人びとの人生を台無しにしていく。同時に浮き彫りになる主人公の過去が重なる。

西村健『出戻り』。二年ぶりに人事異動で筑豊に戻った主人公の刑事。筑豊での過去が再び主人公を苦しめるが…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2016年1月9日
読了日 : 2016年1月9日
本棚登録日 : 2016年1月7日

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