日本人とユダヤ人 (角川oneテーマ21 A 32)

著者 :
  • KADOKAWA (2004年5月10日発売)
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ウクライナとロシアの戦争は、プーチンさんが止める、といいさえすればたぶんおわる。
なんだか、はじまってからずっとそんな感じがしている。
問題はなぜあのかしこかったプーチンさんでさえ、こうなってしまったのか。
しかも、国内にチェチェンなどのいつ破裂してもおかしくない問題を抱え、足元で100人の死者を越えるホール襲撃事件が起きてもウクライナの関与が、といいはじめる。
これって、ウクライナのせいにしたらもっと大変なことにならないか?
判断を狂わせる何がそこにはあるということなのだろう。
しかし、それにつきあわされるロシア人はどうなる? あれは、ドストエフスキーや、プーシキンや、トルストイを生んだ国民だぞ、などとずっと考えている。
この戦争はどうしても、ウクライナ側に一理あるようにみえる。
経済的には、つらいものがあるけれども、どう考えてひっくりかえしてもウクライナのほうが信じられる。
近頃のロシアには唖然としてしまうのだ。
何か、この結び付きがたい、不条理を整理する方法はないのか。
ことは、これだけにとどまらない。イスラエルとパレスチナの戦争だ。
だが、こちらは少しみえていることがある。というのは、イスラエルが国としての経験があまりに薄いし短いということだ。
だからといって、パレスチナの人々が、殺されていい理由ならない。
たぶん、国というものは微妙にその国の指導者
のもつフィルターをとおしながらの関係をとるものなのだろう。
だから、隣り合った国には、微妙にその国どうしでないとわからない阿吽の呼吸のようなものがある。
それが決定的に欠けている感触。
こんなことが、あってこの本を手に取った。
この本は、不思議な本で実をいうと同じ本を二冊買うところだった。
ためしに、図書館に行って著者の違う同じタイトルの本を二冊かり出してみるといい。
その意味がわかるだろう。
そして、ユダヤ人とと日本人と言いながら、決定的に日本人論である。
それが、とんでもない教養に裏付けされてくりだされてくる。
名著で奇書。
ただ、ひとつ問題がないこともない。
著者のいう人間敎とでもいうべき日本人の特性の中身である。
中身に何をこれから入れることができるか、によって変わるよな、ということ。
しかも、言葉にならないことまで含んでいるだろうから、できれば少しでも徳性のようなものが増えないものか、などと考える。
戦争だけにかかわらず、大きな問題を抱えつつあるのだが、未来に対して開かれている本でそのために読みつがれてきた本なのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年4月6日
読了日 : 2024年4月3日
本棚登録日 : 2024年4月3日

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