知人から勧められ、購入。
まず一番嬉しいのは実はこの、本の装丁だったりもする。
普通の本の大きさではなく、縦長の、絵本のような美しくもクラシカルな装丁。
本を読む楽しみはいろいろあると思うが、最近本の、インテリアとしての魅力を再認識しているため、不思議な雰囲気のこの本を、楽しく読んだ。
本のタイトルにもなっている「白壁の緑の扉」は、不可思議な風合いの、SFというよりはファンタジーと言っていいと思う。例えばクトゥルーや桃源郷、遠野物語、平たくはチルチルミチルの世界にいたるまで、いかに人が「こちらではなくそちらの」世界に憧れ、理想化していたかをあたらめてこの美しい文章で読み、考えた。
日常にふと入り込む、理想の世界への扉。
開くまで向こうがわからない魅力と恐怖とを伴いながらも、手にしている「こちら」ちお対比される「あちら」には、こちらで叶わない何かがあるのではないか、理想があるのではないか、という人間の根源的理想は、古今東西場所も文化も超えて、たしかに存在することを、またそのことがいかに人が心の底では1つの生命体として精神的に共通のベースを持っていることを、あらためて思ってみた。
これはすでに物語ではなく、事実としての事象なのではないのか?
などと、大人げなく考える自分に苦笑しつつも、どこかでそんな、「ココデナイドコか」を思う自分も思想に隷属する人間なのだと、当たり前のことを思ったりもした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
丁寧に書かれた物語に、うっとり。
- 感想投稿日 : 2013年1月27日
- 読了日 : 2013年1月27日
- 本棚登録日 : 2013年1月27日
みんなの感想をみる