白壁の緑の扉 (バベルの図書館 8)

  • 国書刊行会 (1988年9月24日発売)
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本棚登録 : 41
感想 : 5
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知人から勧められ、購入。

まず一番嬉しいのは実はこの、本の装丁だったりもする。
普通の本の大きさではなく、縦長の、絵本のような美しくもクラシカルな装丁。
本を読む楽しみはいろいろあると思うが、最近本の、インテリアとしての魅力を再認識しているため、不思議な雰囲気のこの本を、楽しく読んだ。

本のタイトルにもなっている「白壁の緑の扉」は、不可思議な風合いの、SFというよりはファンタジーと言っていいと思う。例えばクトゥルーや桃源郷、遠野物語、平たくはチルチルミチルの世界にいたるまで、いかに人が「こちらではなくそちらの」世界に憧れ、理想化していたかをあたらめてこの美しい文章で読み、考えた。

日常にふと入り込む、理想の世界への扉。

開くまで向こうがわからない魅力と恐怖とを伴いながらも、手にしている「こちら」ちお対比される「あちら」には、こちらで叶わない何かがあるのではないか、理想があるのではないか、という人間の根源的理想は、古今東西場所も文化も超えて、たしかに存在することを、またそのことがいかに人が心の底では1つの生命体として精神的に共通のベースを持っていることを、あらためて思ってみた。

これはすでに物語ではなく、事実としての事象なのではないのか?

などと、大人げなく考える自分に苦笑しつつも、どこかでそんな、「ココデナイドコか」を思う自分も思想に隷属する人間なのだと、当たり前のことを思ったりもした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 丁寧に書かれた物語に、うっとり。
感想投稿日 : 2013年1月27日
読了日 : 2013年1月27日
本棚登録日 : 2013年1月27日

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