ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)
- Zoran Zivkovic (2010年10月15日発売)
ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語
あたしの敬愛サイトでべた褒めだったので、
そうして注意事項として「短いからさらっと読むと後悔する」とあったので、
すごく気をつけて読んだ。
ボトルから直接顔にスプレーするんじゃなくて、一度手のひらにとって、
手のひらの温度で暖めて、自分の体温が移ったぬくい化粧水を顔に、
ぎゅって丁寧に押し付けるくらい、丁寧に文字を拾った。
自分を本の世界にすとん、と落としてしなやかに読書をすると、
くるくるめまぐるしい、美しい物語に正しく入りこめる。
そしたらきっと、唐突と思わせぶりの終幕を、最高の鳥肌で味わえることになる。
第一話を読み終わって、あぜん。正直すごすぎて、うまく感想さえ書けない。
カレイドスコープのような、きらきらした断片が、最後にあまりに美しい大団円に。
でも、あたしの読み、本当に正しいのかな?
いや多分、正しいと思う。
でもお願いだから誰か、答えあわせさせて?
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2012/07/post-e4e9.html
ここを読む限りはおおかた、私の鳥肌は正しかったんだと思う。
第二話はまた、奇妙で乾いた物語。
個人的には美しいとは思ったものの、第一話ほどの感銘はなかったのでパス。
ひとつだけいえるのは、あたしも同じような夢、みたことあります。
最後の第三話。
これも、たまらなく美しくいびつで、涙が出るような孤独の物語だった。
最後にカタリーナの目に映ったのが、できれば美しい空だったらいいのに、と、思う。
なんともいえない、贅沢読書。
透明感のある華奢な輝きの、とんがった氷のようでした。
あーもう、コトバにならない。
お願いだから誰かこの本を読んで、あたしに、何が見えたか教えてくれませんか?
あなたとあたしの見た世界が少しでもクロスしたならば、ぜひ、一緒に、
第一話のティーショップに行ってください。
この物語と本当に、ね、シンクロできたなら、あなたはあたしの誘いを、断れないでしょう?
一緒に、永遠に、反転しよう?
ちなみに以下、全くの蛇足なのだが、第一話の表現というか訳が気になりまくりで最初はまったく、物語に入れず。
地の文章はどうなっているんだろうか?というのは非常に、文章が平易だからだ。
そうして常用漢字に変換できる箇所まであえて?ひらがなにしてあるのが非常に多いのも気にかかる。
表記にも少し癖がある。ショーではなくてショウ、マンではなくウーマン。
作者の意図と選び取った言葉が、間に入る翻訳家のオブラート越しにしか感じられない歯がゆさ。
隔靴掻痒、というレベルではないけれど、オブラートがまとわりつくようで少し、居心地悪いよう。
例えば24ページ最後の行:
【男は新しいスタントウーマンに恋をして、彼女にてきびしくふられていたのですが、】
この一行をつまんでも、恐ろしいほどにその表記を変えることができる。
・男は新しい女性のスタントマンに恋をして、カノジョに手厳しく振られていたのですが、
・オトコは新しいスタントウーマンに恋をして、かのじょに手きびしくふられていたのですが、
・男は、新しいスタントウィメンに恋をして、彼女にてきびしく、ふられていたのですが、
表記だけでなく表現も変えてよいのであれば
・男は新しいスタントウーマンに恋慕の情を抱いたもののけんもほろろの扱いを受けたのでしたが、
・男、新しきスタントウーマンを見初めしも叶うことあたわず
・男は新しいスタントウーマンに岡惚れしてこっぴどく拒絶されていたのでしたが、
などなどなど。いかようにでもニュアンスは変化する。
この作品の訳はこれで本当に、作者の狙い通りなんだろうか?
とにかく平易な文章なだけに、気になって仕方ない。
- 感想投稿日 : 2012年8月9日
- 読了日 : 2012年8月9日
- 本棚登録日 : 2012年8月9日
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