国際政治学をつかむ〔第3版〕 (Textbooks tsukamu)

  • 有斐閣 (2023年4月11日発売)
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感想 : 7
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 定期的に基礎に戻って知識の定着を図る計画。今回初めて「つかむ」シリーズを手に取ったが、非常に良い入門本であると思った。内容のコンパクトさはもちろん、各章の最後に読むべき文献リストが提示されているのは非常に良い。
 他にも国際金融論や国際経済学、財政学等興味のある分野も出ているようなので、是非読みたいと思う。

 本書はざっくり言うと、第一章が歴史、第二章が理論、第三章が体制と外交、第四章が現在の問題といった構成になっている。個人的には、第二章のリアリズム・リベラリズムの思想、コンストラクティヴィズムの内容が簡潔に過不足なく解説されており、腹落ちの良い内容で満足。あまり面白くない(ぼくだけかもしれないが)国際機関の章も分かりやすかったので大変勉強になった。

以下、備考。

・カー『危機の20年』一時大戦後のリベラリズムを批判。ナチスドイツに対し英仏などが宥和政策をとったことを批判し、パワー均衡を説いた。
・モーゲンソー、バランス・オブ・パワー
・ウォルツ、ネオリアリズム。パワー分布状況に基づく構造が国家行動を規定
・覇権安定論もパワーを重視する点でネオリアリズムの潮流に位置する。
・リベラリズムは学説というより、世界大戦後の国際秩序のあり方
・ハース、新機能主義、非政治的な分野での統合の進展が政治的な統合を容易にする「波及効果(スピルオーバー)」を説いた。
・レジームは、国際関係の特定問題における、諸主体の期待が収斂するところの黙示的あるいは明示的な原則、規範、意思決定手続きの集合と定義
・覇権安定論において、覇権国によって作られたレジームに他の国々が従う例は多い。ただ、レジーム論、ネオリベラル制度論の代表たるコヘインは、覇権衰退後もレジームが継続しうるとした。
・ネオリアリズムが構造レベル要因としてのパワー分布状況を排他的に重視したのに対し、国家レベル要因の重要性をネオリベラリズムは実証を試みた。ラセットは、民主主義国家同士は戦争をしないという民主的平和論を提唱。
・ロストウ、近代化論。マルクス等、従属論
・ウォーラーステイン、世界システム論、「中心」「周辺」「準周辺」があり、この3層にどの国が属するか動的に変化
・コンストラクティヴィズムの3つの方向性。①カッツェンスタイン、国内の文化や規範がいかに一国の対外政策に影響してるか、②フィネモア、規範がどう国際的な広がるか、③政府はなぜ規範を遵守するか
・ウォルファーズ、安全保障とは「獲得した価値に対する脅威の不在」
・他国より「わずかに安全(マージン・オブ・セーフティ)」であればよしか、自らが圧倒的な覇権の達成をめざすかで、前者が防御的リアリズムで後者が攻撃的リアリズム。防御的リアリズムでも「安全保障のジレンマ(パラドクスと思料)」に陥りうる。
・ウォルト、「脅威の均衡」、国家は他国のパワーではなく、脅威に対抗しようとする。
・永井陽之助、ある程度パワーを有する国家が中立を選択すればそのことが勢力均衡に影響を与える。「中立化という行為は、その政治的文脈によっては、全く非中立的行為となる」
・スナイダー、同盟とは「メンバー以外の国に対する軍事力の行使(不行使)のための国家間の正式な提携」、軍事力の行使を主要な目的とする点で、同盟は国連やEUとは異なる。
・国連で規定されてるのが集団安全保障、同盟の基礎は集団自衛権
・フクヤマ、「歴史の終わり」、人類の歴史は、支配的な政治体制に異なる政治体制またはイデオロギーが挑戦し、両者の本質的な統合を通じて、より優れた弁証法的な発展を遂げたが、もう自由民主主義に対抗するイデオロギーの出現は考えられないと説いた。
・ケネス・ウォルツ、個人・国家(国内政治)・国際システムの3つの「分析レベル」
・アリソン、アリソン・モデル、第一モデルは合理的行為者モデル、第二は組織過程モデル、第三は政府内政治モデル。さらに政策決定者の思考や心理にも射程を伸ばす「グループ・シンク」モデルも
・危機ではない日常型の政策決定では、多くの場合漸増主義(インクリメンタル)的決定になりやすい。
・バットナム、「ツーレベル・ゲーム・モデル」、国際関係と国内政治の連動から対外政策決定過程を分析する手法
・パブリック・ディプロマシー、外交の目的を達成するためには相手国政府に働きかけるだけでは十分でなく、相手国の国民レベルに働きかけることが重要、という認識に基づく活動。ソフトパワー

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際関係
感想投稿日 : 2023年5月5日
読了日 : 2023年5月5日
本棚登録日 : 2023年5月5日

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