沈黙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1981年10月19日発売)
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初出1966年。自分が生まれる前。
それでも堅苦しさを感じさせず、暗くつらい物語だったけど挫けず読み切った。自分を褒めたい。
ただ最終章は一転、書簡のみの記述になる。「〜〜候」「〜候し〜候ありて〜申し候」と候100回くらい言われもうどんだけやねんとツッコミ入れたくなる。どうやら後日談のようで、主人公の信仰心がなんとか神の御許に召されたのかなと雰囲気で理解した。

ゆるふわ系仏教徒としては、キリストの教えはほぼ門外漢。以前に、傑出したコミック『チ。』を読んだ時の予備知識にも助けられた。
その共通点はただ一つ、宗教の迫害は痛ましい。という事実だ。集団が集団を変えようとする時、人を変えようとする痛みの何倍もの負のエネルギーが発生する。アメリカが、中国IT企業やアプリを締め出したのも実は紳士的で理性的だったと思えるほど。集団の本性は残虐だ。

苦しみに満ちた現世を清らかに生きる術が宗教だとしたら、これほどの倒錯もない。そして、このストーリーにして下記の一文は難解すぎる。


── 罪とは、人がもう1人の人間の人生の上を通過しなながら、そこに残した痕跡を忘れることだった─

神はすべてを覚えたもうか。
あるいは空に帰すものか。
色即是空、空即是色。
毎日拝んでいても、死者だけが覚えてくれているのかもしれない。それで満足できない自分も確かに居る。


信仰はわからん。
まだまだ苦しみ足りない私に、扉は閉ざされて沈黙したままだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月23日
読了日 : 2024年1月23日
本棚登録日 : 2023年12月9日

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