なぜ日本が対米戦争に踏み切り、そして完敗したのかを知りたくて、日本の「失敗」をテーマとする本を探していたところ出会った一冊(松岡正剛の千夜千冊から)。結果的に、とんでもない傑作に出会った。
日本が中国に進出し、韓国を併合し(1910年)、対支二十一か条の要求(1915年)を行なった辺りからの、様々な知識人の言論を一つ一つ丁寧に拾い上げ、平易な言葉で解説してゆく。そうすることで、当時の日本の政治や評論、文学、メディア等がどのような思想を背景に言葉を発し、軍人や世論に影響を与え、戦争が進められていったのかを解き明かす。
戦争の歴史というよりも、思想史であり、思想が国を形作ったことを証明するような非常に説得力のある論考だと思う。著名な言論人が多く登場し、そうした人々の考え方に浅くではあるが広く触れるきっかけとしても優れた本だと思う。
松岡正剛が「松本健一が書いた本は、長らくぼくが信用して近現代史を読むときに座右にしてきたものである。」と言ったことの意味が分かる思いがしている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2019年8月2日
- 読了日 : 2019年8月2日
- 本棚登録日 : 2019年8月1日
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