南の島のティオ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (1996年8月6日発売)
3.83
  • (105)
  • (139)
  • (153)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 1193
感想 : 125
4

豊かな自然と精霊の息づく島の、
透明な、絵はがきみたいな短編集。

見たことがないはずの美しい景色が鮮明に、
なぜか懐かしく思い浮かぶような、
原風景のような作品でした。

それにしても、精霊とか南の島とか、
そんなに馴染みやすい舞台設定ではないはずなのに
なんでこんなにすっとはいってきて、
心地よく馴染むのか。

子供を読者として想定している池澤さんの作品、
すごい好きだ。

風景描写もさることながら、
登場人物のおおらかさ、あっけらかんとした感じも
さっぱりと心地よい。

“たぶん勇気というのは男らしさや元気や
無謀な冒険心とはまるで違うもので、
ひょっとしたら愛と関係があるのかもしれない。”

主人公のティオが優しくて、素直で、
透明で研ぎ澄まされた感性の持ち主なので、
この物語の案内人として
とっても優秀なのもいいんだろう。

実は大学生の頃、『ティオの夜の旅』という
合唱曲を歌ったことがあって、
この作品が原作になってるんだけど、
これも風景の浮かぶ名作なので
ぜひ一緒に味わって欲しい。

複数の表現方法で
ひとつの作品世界を味わえるなんて超リッチだ…!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月5日
読了日 : 2021年5月5日
本棚登録日 : 2021年5月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする