経営センスの論理 (新潮新書)

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  • 新潮社 (2013年4月17日発売)
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著者の言いたいことを書いた読みやすい本。
新規事業の人、管理職(マネージャー)、日頃仕事に鬱憤がある人に読んでもらいたい。


・印象的なこと

1、p.14
優れた戦略をつくるために必要なのは「センス」。スキルとセンスをごっちゃにすると、スキルが優先し、センスが劣後する。

2、p.22
客観的なものだけで判断していくと、同じような結論に至る。それだけでは他社との差別化を可能とする面白みのある戦略にならない。好き嫌いにこだわることが重要である。

3、p.28〜
ハンズオンを目的に、「何をやらないか」をはっきりさせる。垂直的・水平的分業による形式的な線引きではあり得ない。

4、p43〜
その業界に根付いている「認知された非合理」を乗り越える。ここにイノベーションと進歩の分かれ目がある。
イノベーションは技術進歩とは異なる。「次から次へとイノベーションを生み出そう!」という掛け声はイノベーションの本質を誤解している。イノベーションは、「非連続性」だからだ。
イノベーションは供給より需要に関わる現象である。どんなにスゴイものでも、顧客の心と体が動かないとイノベーションにならない。

「できる」だけではイノベーションにならない。顧客がその気になって必ず「する」。その絵が描けてはじめてイノベーションの芽となる。
アップルは、この「する」を突き詰めている。

5、p.66
「いまはまだないけれども、将来は可能性のあるニーズだから…」という発想では、イノベーションは難しい。人間の本質部分では連続的なもの。今そこにないニーズは、将来にわたってもないままで終わる。未来を予測、予知する能力はいらない。今そこにあるニーズと正面から向き合い、その本質を深く考える

6、p.148
企業は逆境を正面から受け止め、人のせいにしないことだ。問題は常に山積みしているものと割り切る。

7、p.152
戦略は個別企業の問題であり、個別企業の中にしか存在しない。

8、p.173〜
限られた資源を有効活用する戦略が大切になる。逆に言えば、資源制約がなければ戦略は必要はない。これが戦略論の前提として大切なこと。

9、p.178〜
「カネ、名誉、権力、女・男」のどれが一番かは愚問。相互に繋がっているから。

10、p.182
商売の本筋は「長期利益」。適正に長期に、しっかり儲けること。

11、p.201
いつの時代も前世代の価値基準は世の中の実際と少しズレている。ズレた基準に引きづられると新陳代謝が進まない。

12、p.204〜
「働きがいのある会社」と「戦略が優れた会社」は高い確率で重なっている。
「人間はイメージできないことは絶対に実行できない」。だから、未来への意思を会社で働く人たちにイメージさせる。頭に入らなければ、会社は動かない。数字より「筋」。

13、p.211〜
「具体」と「抽象」の往復。具体だけだと、目線が低くなり、視野が狭くなり、すぐに行き詰まってしまう。
抽象化・論理化して本質を掴み、そこから具体のレベルに降りていく。
どんな仕事も最後は具体的な行動や成果での勝負である。ただし、具体のレベルで右往左往してあるだけでは具体的なアクションは出てこない。抽象化させることで、取るべきアクションが見えてくる。

14、p.221〜
情報インプットの目的は、「インプット自体のため」と「アウトプットを生むため」。前者を「趣味」、後者を「仕事」という。
人の役に立つ成果が生み出されなければ、仕事と言えない。インプットしているだけで、アウトプットな出なければ趣味の領域である。
情報のインプットを増やしていけば、自然とアウトプットが豊かになるということは絶対にない。
情報は仕事の友ではなく、わりと悪質な敵である。

15、p.227〜
人間が何か継続的に取り組むためには、「意味がある」と「面白い」のどちらか/両方を満たすこと。
その行動に目的達成の意味があると思えるときに、人は努力を投入する。
そのこと自体にその人にとっての価値があると面白くなる。
「面白い」から始めることか大切。「意味がある」と思って始めても、知識のインプットそれ自体は面白くないことがほとんどなのでそのうち挫折してしまう。

16、p.231〜
人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではない。
満足度は一本の物差しの両極ではない。それぞれが独立の次元である。
満足の反対は、不満足ではなく、満足がない状態。
不満足の反対は、不満足がない状態。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営
感想投稿日 : 2021年10月9日
読了日 : 2021年10月9日
本棚登録日 : 2021年10月9日

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