<ちらめくポーチュラカ>
周りとの関係の構築を苦手とする主人公が、幼稚園でのママ友たちとのコミュニティでなんとかやっていく話。
有くんがいなくなった件で自身の過去の再認識をするシーンは、中々上手くいかない現状に対する答えを模索する中で、乗り越えられない過去を自分にとって都合の良い解釈をしたように見受けられたが、十字架から逃れたいと願う人間の心理をついている描写だと思った。
<サボテンの咆哮>
自分が無邪気に公演で遊んでいるのを見つめていた父は、このようなことを考えていたのだろうか。
自身の不器用さゆえに早紀に抱え込ませてしまった過去が、早紀だけでなく義両親に対しても寛容にならざるを得ない状況を作り出してしまった。そのストレスが溜まっていく過程は、どうも見るに堪えない。とりあえず義両親は図々しいので退場してください
<ゲンノショウコ>
障害のある子供がテーマになっている。こういったテーマにも切り込んでいけるのか。
時に残酷でもある純粋さが、主人公の心の壁を容易く乗り越えてゆく。あまりに剥き出しの心に涙腺がやられました
<砂のないテラリウム>
浮気男○ね
<かそけきサンカヨウ>
実の母の描くサンカヨウが重ねるものが、自分のことではなくなってしまった現実に衝撃を受けている描写が辛い。
「美子さんのことを全部知ったわけではないけれど、もっともっと、透明になりたいと、私は強く思った。美子さんのように。もっともっと透明で、強い女の人に。」
今まで家の家事をほぼ全てやってきた陽は、そうしてくれたかどうか記憶はないが、自分を産んだ母のようになりたいと、願っていたのだ。普通の家族になりたかったのだ。普通って?血が繋がっているかどうか気にしてしまう自分は良くないんだろう。それを乗り越えていけるのは、透明さなんだろう。美子さんのような、透明な女の人。陽のなりたい存在が美子さんへと変わったことでようやく彼女の思い描く家族の形は輪郭を帯び始めていく。
- 感想投稿日 : 2023年2月26日
- 読了日 : 2022年11月2日
- 本棚登録日 : 2022年10月23日
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